25話 終わりなき世の

暫く篠山の筋肉に己の膨れた腹を摘んだり摩ったりしていたが、ハッと我に返り、「庄屋三咲さん大原礼子さん起きて下さい?。」

「庄屋さん顔拭きのお絞りを渡してあげて下さい。」

ええッ!生きていた!? 大原輝がベッドから飛び起き庄屋三咲の立っている背後を摺り抜けて妻の礼子の元へ駆け寄り両肩を鷲掴み礼子!礼子!とオイオイ泣いていた。号泣だった。

 オイオイと泣く輝の背後で「ハイハイ。」と悔し紛れの返事をする三咲は不貞腐れていたが、顔面はそうでは無かった。

 庄屋三咲と大原礼子の身体はコロナ星人に乗っ取られていなかった。

地球人の愛が邪魔をして完全なる憑依にならず、表面のみだけ張り付いていたのだ。

 輝にその説明をしながら「オイオイ。」と、輝の背中から聴こえて来たものだから律儀にも「ハイハイ。」と返事をしたまでだった。

 それほど面白くは無かったが、それに・・・。

 大原輝が患う後遺障害には高次脳機能障害の内、感情失禁・失語症・半側空間無視等が顕著な症例として輝が知らぬウチに発症していた。

 何れも空間無視に、左脳が代行している場合が多く、輝にとっては不本当な形と為って輝の眼前に現れた。

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