第121話 怪物
濁の中から怪物が生まれました。
怪物には親なんていません。
森のおくのおくのおくのおく。
そこで大きくなりました。
ある日、森にきのこ取りにおじいさんと孫がやってきました。
「ジャンじいちゃん、これは食べられるの?」
「トーマス、こら、毒キノコじゃ。
食べたらな、ゲラゲラ笑い転げて死んでしまう。」
「うわわ!こっわい!」
怪物は思いました。
いいな、いいな、家族がいるって。
欲しいな、欲しいな。
そして、孫のトーマスがひとりになったときに
言いました。
「あのさ、君、足が悪いみたいだね?
僕に君の身体をくれたら、走って飛んで何でもできるようになるよ。」
「えー、嫌だよ。君に身体をあげたら僕はどうなっちゃうの?」
「大丈夫さ。僕は君の中に入るだけ。
そこから力をわかせるだけさ。痛くも何ともないんだよ。試してみる?
ほら、あそこに罠に捕まって足を挟まれたキジがいるね。
僕がキジの中に入るから見てて。」
怪物はキジのクチバシからするりと入っていきました。
キジは金具の罠をクチバシでつついて壊して
血だらけの足なんか治してしまい、空をひゅーんと飛んで見せました。
「どうだい?」怪物はトーマスに聞きました。
トーマスは、足が治ったらやりたい事がありましたから怪物の言う事を聞きました。
トーマスの中に入った怪物は、
「やった、やったぞー!これで家族ができる。あ、キジ死んじゃった。食べちゃえ。
バリバリ、ボリボリ、ごっくん!」
「トーマス、ひとりでいたら迷子になるよ。さあ、おじいちゃんと家に帰ろう。」
怪物はおじいちゃんと家に帰りました。
そこにはジェーンおばあちゃんが待ってました。
怪物はおじいちゃんとおばあちゃんが出来て満足しました。
翌日、少し離れた隣の家のみんなが庭でバーベキューをしていました。
お父さん、お母さん、男の子と女の子のきょつだい。楽しそうでした。
怪物は思いました。
「あっちの方がいい。楽しそうだもん。
おじいちゃんやおばあちゃんは要らない。」
そう言うと、おじいちゃん、おばあちゃん、トーマスまでバリバリ、ボリボリ、ごっくんと
食べてしまいました。
こうして、怪物はあっちの家、こっちの家の家族になっては物足りなくて、、。
最期はだあれもいなくなりました。
怪物はひとりきりになりました。
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