第86話 桜姫
屋久杉のところへ
鳥たちが伝言をはこぶ
桜姫の満身ぶりには
困ったものだ
千年杉の長老は呟いた
桜姫は自分を観に来る人間共に
満悦至極
人間共よ、さあ、私を仰ぎみるがよい
さあ、さあ、美しかろう
人間達は大勢で桜を見上げて、その足元の
小さな花や草を踏みつけていることに
気が付かない
千年杉の長老は、そのからだを
うぉぉーーーーんっと揺さぶる
すると地面が揺れてく
桜の下で踏みつけられた花や草の
根っこに優しく振動が伝わる
千年杉様のお力添えだ
花や草は生き返る
桜姫は今年もまただ
これで、私は散っていくのねと思う
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