ウタ

菜の花のおしたし

第29話 500マイル

金の卵は汽車に揺られて

荷物みたいに街に来たのさ。

800キロの木のレール。

ガタン、ゴオンと打ち鳴らしてさ。


金の卵なんて嘘っぱち。

安く買い叩かれただけさ。

ひよこはそれでも、にわとりになったんだ。


何百匹、何千匹、いやわからないくらいの

卵は渦に飲み込まれていったさ。


どこの国だって同じだよ。

今だって、そんな国はいくらでもあらあ。

親方は下品に金歯を光らせて笑ってやがる。





家を離れるよ。

帰れやしないだろ。

そうさ、防弾チョッキにヘルメット姿で機関銃を抱えて僕は汽車にのる。

母さん、100マイル離れたら、僕の事は

忘れて。

書き置きしたんだ。

キーウまで、500マイルにある街が

僕を待っている。


神様、母さんをお守り下さい。










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