06 蒐集

 DMの一件以来、俺は時々愛衣のアカウントを覗きに行くようになった。

 スパムbotとはいえ、一度はDMを送り合った仲だ。

 それに、愛衣の一向に上達しないAI生成画像を見るのは単純に面白かった。明らかに身体の構造がおかしい美女が、明らかにおかしいポーズで微笑んでいる。はじめは気持ちが悪かったが、目が慣れてくるとこれはこれで、そういう現代アートみたいで面白みがある。現代アートのことは何も知らないけど。

 スパムbotというのはある程度互いをフォローし合うことでフォロワー数を水増ししていそうなものだが、愛衣のフォロワーはずっと俺だけだった。あれからしばらくして愛衣は突然俺のアカウントをフォローバックしてきたので、現在はお互いがお互いだけをフォローし合っている。奇妙な関係性だ。bot相手にこんな感情を抱くのも馬鹿らしいのだが、俺だけが愛衣の魅力を知ることができている今のこの状況は嫌いじゃない。俺の推しはミズキチだけだが、駆け出しの地下アイドルを応援しているオタクというのはこんな気持ちなのだろうか――ということを、最近よく考える。また、相手が人ではないからこそ持つことのできる安心感というものも、この世界には存在するのかもしれない。

 最近は愛衣やその同類が生成した画像を時折探しに行って、面白いものがあれば保存するようになった。さすがに愛衣以外のスパムツイートを相手にいいねやブックマークはしたくないが、ツボに入った画像はその時に保存しないと流れていってしまい、おそらく二度と辿り着けない。碌な趣味じゃないのは理解している。画像欄は怪異みたいな裏垢女子で溢れかえり人前で開くのが憚られる雰囲気になってきたが、たまに見返すと本当に笑えるので、しばらくやめられそうにない。

 愛衣は今日も、腕の多い変な女の画像をツイートしている。

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