皇帝の忌み子は下剋上でハーレム崩壊を目指す!~ハーレムの美女たちは全員大切なお母さん!ついでに可愛い異母兄も救っちゃうぞ!~
多汁人格
第1章 血の証明
第1話 ハーレムの住人
物心ついた頃、俺は見知らぬ異世界に居た。居たと言うか、気付いたら見知らぬ野郎にぶん殴られていた。
先ほど、過去の、成人するまでの日本の記憶を思い出したが、死んだ時の記憶はない。加えて、こんな煌びやかな世界で生きていた記憶もない。しかも、己の手足は小さく、幼児と言える年齢だと予想がついた。
まぁ、つまるところ、よくある転生なのだろう。俺はアッサリ納得した。いや、納得せざるを得なかった。何せ、己の身に危機が迫っている。
「よくも我のハーレムの女に手を出したな!」
先ほどぶん殴ってきた見知らぬ男が拳をブルブル振るわせ目の前で激昂している。今、ぶん殴られて床タイルの上にへばりつくしかない自分と、見上げた男の顔。交互に視線を送り、それから思い出した。
コイツ、俺の実父だわ!と。
一応、言っておくと、日本の方ではなく、この世界の実父だった。赤褐色の髪に碧の瞳…、うーん、こんな顔だったかな~くらいにしか認識がなかったから気付かなかった。
つまり、俺は今、幼気な幼体にして実父に殴られ殺されかけているわけだ。まぁ、それも仕方ない。何故なら、そもそもコイツは俺の存在を知らず、俺はここで隠されて育てられていたのだから。
【
☆☆☆
「お止めください!陛下!」
目も眩むほどの金髪美女が、悲痛に叫びながら俺の前に飛び出してきた。薄絹のみの豊満な胸元に庇うように抱えられ、長いそのサラサラの金糸に包み込まれる。俺がボコられた顔を腫らして見上げれば、美女はこちらの頬をソッと掌で覆い、美柳を寄せて今にも泣き出しそうに見えた。
「ダーシャ!庇うなら貴様とて容赦せぬぞ!」
「この子は、イアスは、このように幼く、陛下の」
言い募りながら、ダーシャと呼ばれた金髪美女は気丈にも俺の実父(おそらく皇帝陛下)を真っ直ぐに見据えた。
しかし、皇帝の怒りは衰える事はないようだ。
「我のハーレムに何故そのような異物がおるのか、答えてみよ!ダーシャ!」
「わたくしはどうなろうと構いません!お約束ください、陛下!この子の命だけはお救い下さると!でなければ、何も、わたくしは何も…」
己の命の危機にも関わらず、目の前でハラハラと零れ落ちる美姫の涙は、これ以上ないほどに美しいと俺は見惚れていた。
「その様な者を庇うとは、まさか貴様の子か!ハーレムにいながら男と密通し、秘密裏に産み落としたか!」
「いいえ、いいえ、その様な事は決して!」
ダーシャが何度も頭を振り否定するが、目の前の傲慢な皇帝は納得していないようだった。寧ろ、青筋を立て、縊り殺さんばかりに俺を睨んでいる。おそらくだが、ハーレムの中でもダーシャが特にお気に入りの寵妃でなければ、俺ごととっくに斬り捨てられていただろう。
「ダーシャ、俺は平気だから」
ダーシャの胸元から顔をあげ、俺は口の中の鉄錆の味を我慢しながらどうにか話す。予想通り、言語の問題はなく普通に話せるようで安堵した。
「イアス、イアス、大丈夫よ、わたくしが」
「いえ、俺は貴女に被害が及ぶ事を望みません」
涙ながらに胸に掻き抱き庇おうとするダーシャを押し止め、俺は床タイルに平伏しながら呟いた。
子供らしくない物言いだと自覚はあるが、転生前の記憶と幼児の記憶が突然混じり合ったのだから仕方ない。本来なら、ゆっくりと己の状況を整理したかったが、そんな余裕はないようだった。
俺の人生は既に平穏スタートとは言い難いのだから。
「皇帝陛下、御前にて発言する事をお許しください。卑称の身故、礼を失したのは僕であり、真実、僕はダーシャの子ではありません。勿論、今のこのハーレムのどの女性の子でもありません」
「では、貴様は誰の子だと申すか!」
不遜にも眼前で発言する幼児に激昂した皇帝が、カチャリと腰の剣へ手を伸ばしたのを感じ取った。しかし、ここで怯むわけにはいかない。
このハーレムで、自分を隠し育ててくれたダーシャや女達の思いを無下にするわけにはいかないのだから。
「僕は―――――、死者より生まれ落ちた忌み子にございます」
最早、俺は斬り捨てられる覚悟で状況に臨んでいたが、而して、永遠とも呼べる静寂のあと、皇帝の剣がスラリと抜かれる音がした。
あぁ、転生定番のハーレム創りではなく、他者のハーレムで死ぬ転生とは、これ如何に。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます