まだ死ねない

美月つみき

第1話

どうやってここまできたのかは覚えていない。

目の前にはホームドアが設置されていなくて、剥き出しになった線路。

電車が来るというアナウンスが僕を誘うかのように鳴り響く。

もういいよね、死んでも。

誰に迷惑をかけるとかはもう何も考えられなかった。

僕は足を踏み出した。

ードアが閉まります、ご注意下さい。ー

僕は電車の中にいた。

家に着き玄関にへたり込むと、会社に明日休むと連絡をした。

次の日、当日に診察してくれる心療内科を見つけて、今の苦しみが少しでも変わるようにと願いながら病院へと向かった。

問診票を書き、名前を呼ばれた。

僕はどの症状が辛いのか、いつ頃からなのかを思い出しながら話していたが、医者は聞いているのか聞いていないのか、わからないような感じだった。

そして話終えて出てきた言葉は、

「へぇ、そんなに悪いんですか?」

僕は何も言えなくなった。

こんなにも苦しくて真剣に話をしているのに、どうしてそういうことが言えるのだろう。

「仕事は休みたいですか?」

「あ……今のこの気持ちで行けないと思っています。」

「あ、そう。そしたら診断書出しますから。うつ病だと思うので薬出しときます。また5日後来てください。」

診断書を出すかは僕が決めることなのか。

うつ病はどれくらい酷いのか。

その後すぐにお大事にと言われ、出て行けとばかりの圧を感じたのですぐに出払った。

「お会計診断書合わせまして、7500円です。」

こんなにも無駄なお金の使い方があったのかと思った。

対して話も聞いてくれないし、診断書を出すかどうかを決めるのは患者自身。

診断もどういう基準なのかわからない。

聞かなかった僕も悪いけれども、聞く気にもなれなかった。

会計を済まし、外に出てから処方箋の紙をグシャグシャにした。

「今日は奮発をしてステーキにしよう。」

そう呟きながら携帯を取り出すと、会社に退社したいと連絡をした。

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まだ死ねない 美月つみき @tsumiki_8

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