第7.5話 幕間2

 ────やっと見つけた


 きっと彼女となら、間違いなく。


 




 街中を探し回ってようやく見つけたのは、白銀のローブを纏った少女。フードで隠れていはいるものの、その横からは綺麗な銀髪を覗かせている。情報によれば歳は十六、身長は私より少し小さいくらい。白く華奢な手足を持つ彼女はある日から、ギルドに通い始めたらしい。


 「すみません、少し……よろしいですか?」

 私はそっと後ろから優しく肩を叩く。

 

 だがその途端、私がこれまで浴びたことのないような種類の殺気を受ける。そして、それと共に振り向いた彼女の表情は、まるで永久凍土のように凍てついていた。私を見るその瞳すらも氷のように冷たく、どこか虚ろげ。まるで十六歳の人間のものとは思えず、思わず二、三歩後退りしてしまう。


 「……誰?」

 そしてポツリと呟いたそれは、まるで全てを憎むかのような、けれどもどこか寂しげな声だった。


 「──私はリーナ・ティルタニアと申します」

 名を名乗りスカートの裾をつまみ丁寧にお辞儀をする。初対面の者と会う時は第一印象が大事だと、かつて散々叩き込まれた経験が、この街に来てからというもの多く活きていた。


 ………………いくら待っても何も返事は返ってこなかった。


 恐る恐る顔を上げると、もう既に少女はいなかった。



 「また……やり直しですね」


  

 一度目は彼女の殺気や冷たい表情に思わず怯んでしまい、辿々しい挨拶しかできず失敗。しっかりとこちらが準備さえしていれば答えてくれる──そう思っていた二回目も、先程呆気なく失敗してしまった。


 

 


 けれども、この街で様々な人を見てきた限りでは、彼女は他と比べてもはずなのだ。それに、彼女の天恵は未だ明らかではない。私の目と調べた情報によれば、これは間違いない情報のはずだ。


 かつて銀翼と呼ばれていた時には、姉と組んで様々な依頼をこなしていた。その時の強さは多くの人々が知っていた。


 「きっと、何か事情があるのでしょう、ですが、私は────」


 私には何がなんでも、やり遂げなければならない事がある。それに、私は諦めの悪い性格だ。



 

 計画を立てに立てた三度目。彼女は、見知らぬ人を連れていた。身体つきからして、おそらく人族ではない。


 他人がいれば少し面倒になるかもしれないと思ったが、これはこれで彼女も逃げにくくなったと判断した私は、物陰に隠れ一度大きく深呼吸をして、いかにも自然に遭遇したかのように、駆け寄る。


 これが、おそらくラストチャンスだろう。

 

 

 




 

 

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