王子様と私
さくら
第1話 1
王子様だ! 王子様がいるよ! 私の目の前になぜか王子様がいるんですよ。優しい微笑み、ロイヤルスマイルとかいうの? あんな感じで、サラサラのストレートヘアーが風邪もないのになぜかたなびいちゃってますよ? いったい何があったの?
廊下で人にぶつかって転んだところまでは覚えてるんだけど、その時にメガネを落としちゃって探すのに夢中になってたんだよね。結局、自分では見つけられなくて誰かが手渡してくれたんだけどね……。そして、無事にメガネが戻ってきた私の目の前には、目にも眩しい王子様の姿がありました。
「大丈夫?」
王子様はそう言いながら、私に手を差し伸べてくれた。
「は、は……はい……」
そう答えると私は、思わず一人で立ち上がってしまった。王子様の手が、所在なさげに差し出されたままだ。だって、男の子の手なんて握ったことないし、ましてや王子様だよ? 握れるわけ無いよね……。うぅ……、でも勿体無いことしたかも。王子様と手を繋ぐチャンスだったのに……。
「あ、あの……あの、ありがとうございました」
私の顔、今すっごい事になってるよね? 絶対に真っ赤だよね? どうしよう……王子様に変とか思われたら……。
「いや、ぶつかったのは僕だし、ごめんね」
そう言って優しい笑みを浮かべた王子様に、思わず私口を開けたまま見惚れてしまった。あ、よだれ出てたかも……?
ボーっと突っ立って王子様に見とれていたら、なんか近づいてくるんですよ。そう、王子様が極上の笑みを浮かべて、私に近寄ってくるんです。え? 何? 何なの? とかちょっとパニックになっているうちに、王子様の手が伸びてきちゃったりして、本当にどうすればいいの?
「ひゃぅ」
王子様に髪を触られて、思わず変な声が出ちゃった……。どうしよう、やっぱり変な奴って思われちゃうよね……。
「髪にゴミが付いてたよ」
そう言いながら、きれいな指で摘んだゴミを見せてくれた王子様。笑顔が眩しすぎるし、恥ずかしいしで、もうダメ……。
「あ、あり、ありがとうございましたー!」
そう叫ぶと、全力疾走で王子様から逃げ出してしまった。なんか先生が怒鳴ってる声が聞こえた気がするけど、そんな事よりも王子様のところから逃げるのが先決だよ。
確実に王子様から遠ざかった場所で、私は走るのを止めた。教室に戻るまでの間、ずーっと王子様の姿が頭の中に浮かんでた。というよりも、あの眩しい笑顔が頭から離れないんですけど、どうしたらいいんでしょう?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます