第22話 謎の研究所
階段を下りた先。何らかの研究所に見えるが、その実態はダンジョン化した建造物であることは明白だ。
『ガーバーバーガー』や『ザッツピザ』の部分はダミーに過ぎず、本当はその地下で違法な実験が行われていたということだろう。
「おお? 電子ロックか。しかも扉も分厚いぜ、どうすんだ?」
「さすが研究所。ずいぶんなロックやな、まあウチには無意味や、がっ!!!」
「脳筋すぎない!?」
ウチらは電子ロックに立ち往生……なんかするはずがない。
硬化した腕を電子ロックのパネルへ叩き込んだ。すると、一瞬エラーを吐いた扉が自動的に開いた。
「さっすがソラだ、機械にも(物理的に)強い!」
「この力に耐えうる機械が無いだけなんだよね、怖くない?」
ウチらは、研究所の内部へと侵入した。
内部では、できるだけ音を立てないように移動する。裸足のウチや、武術の心得がある虎の穴、野生のドンはともかく。ブロワーマンは革靴なのに全く音を出していない。
これも【
「おぉ……」
研究所の内部はダンジョン化のせいで入り組んでおり、パイプや太いコードが絡み合う様はまるでSF作品のようだ。
これで入口付近だというのだから驚かされる。奥はどうなっているのだろうか。
「これはまた雰囲気あるなぁ……そうだ、お2人さん、それにドン。ダンジョンも自然現象で倒壊するタイプが存在するんだ。覚えておくといいぜ」
「えっ、そうなの?」
「知らんかった……壊せへんかったり、勝手に直るもんやとばかり」
急にブロワーマンの
与太話やゴシップのようにも聞こえるが、彼の話す内容には妙な説得力があった。まるで見聞きしてきたような……まあ、変な豆知識とかも話してくるのだが。
「ああ。特にこんな、建造物がダンジョン化したものだと地震で倒壊することもあるんだ」
「家とかみたいなやつやと、気を付けとった方がええんか?」
「その通り! そういったタイプは、得てして火事や爆発も効く。本当にどうしようも無くなったら……それも選択肢だぜ」
協会にこっぴどく怒られるけど。
ダンジョンは基本的に壊すことができないというのが常識。これは探索者免許の講習では知りえなかった情報だ。講習では法律や戦い方を主に学ぶので、ダンジョンの仕様そのものにはあまり触れなかった気がする。
……いや、協会もやってほしくないから、協会で教えるわけがないわな。どの道E、D級の一般人に毛が生えた程度のパワーじゃ壊せないっぽいし。
そんな話をしながら、奥へ進む。
ドンとブロワーマン、虎の穴がそろえば何も問題ない。ウチもダンジョン探索で気配には敏感になってきた。これで気配を掴めないなら、それはウチらの死を意味するほどの強敵だ。
「おっ、モンスターの反応あり。あの扉の奥か」
「どうする? ボクがやろうか?」
「いや、ここは一旦、ソラで行こう」
「ウチがか?」
「ああ、硬化して殴ってみて、倒せそうならそのまま進もう」
ウチならやられるリスクも、2人よりは少ない。
「そういうことなら分かった。ドン、行くで!」
「ジャアッ!」
ウチが【触手】を使い、扉の上の壁へ張り付く。そして、ドンが扉を開けた。
研究所にしては自動ドアや電子ロック式ではなかったので、ドンでも開けられる構造だった。
『ウギョギャアアアアッ!!!』
「なんやコイツ!?」
『ウギョッ!?』
ドンを視認すると襲いかかって来たのは、複数のモンスター(ゴブリン、コボルトとか)を無理矢理つなぎ合わせたようなモンスターだった。
だが、ドアからノコノコ出てきた姿は隙だらけだったので、上から奇襲してきたウチの奇襲で潰されて死んだ。
ウチのスキルは発動時、体重も増加する!
ドアのの奥にもう何もいないことを確認すると、死体の検分をすることにした。
ゴブリンとコボルトは資料で見たことあるので確実だが、大部分をウチが潰してしまったせいで他はあまり分からない。かろうじて爬虫類系のモンスターが使われていることくらいか。
「キメラか何かか? キショい見た目しとるなぁ」
「ジャアァ」
「ドン、食うのもええけど腹壊すなよ……あ、魔石あるやん。久々に見た気がする」
そのモンスターには魔石が複数あった。大きさと質が違うことから、強引に繋がれたことは間違いないだろう。
理性の欠片もない目は、それが原因で発狂してしまったということかもしれない。
「まさか一撃とは……弱くね?」
「そのモンスター、甲羅があって防御力高かったみたいだけど……うん、隙間やらを狙えば簡単かな。動きも不格好で遅いし、読みやすいし」
「こっちは強くね? いや流石にソラが強すぎただけだろ多分。スキルの相性勝ち? 的な?」
確かに、【シン・硬化】はルーキーの持つようなスキルではないだろう。
だが、近接武器と防具に馬鹿みたいな制限がかかる上、射程もめちゃくちゃ短いので、おいそれと力に溺れられない。
「まあ、普通にやったら厄介そうやな。こういう連中のセオリーや、痛覚があんのかも分からん」
「うーん、さっきの資料にも何も書いてなかったし、分からねぇなぁ。とりま、目視で検分すっか」
ブロワーマンはウチらのところまで来ると、死体の前にしゃがみ込んだ。
そして、触ったり匂いを嗅いだりしている。流石に味は見てないようだが……
「……これは」
「何か分かったんですか?」
「やっぱ、このモンスターはある種の
端的に言って、狂っている。
ブロワーマンはさんはそう吐き捨てた。ウチもそう思う。どうやって2種類以上の異なる生物を融合させたのだろう。拒絶反応とか無いんか?
だが、彼は否定ばかりをしなかった。
「正直、コイツを作った奴は天才中の天才だ。多分、世界のバイオテクノロジーの技術レベルが100年は進むぜ」
「そんなにか!? この出来の悪いバケモンがか?」
「ああ。そもそもコイツは
思ったよりヤバそうな案件かもしれない。
もちろん、ブロワーマンの意見が間違っている可能性もある。
だが、こんなことをする奴はどの道、狂っている奴で話も通じなさそうだ。
「それは分かったけど、このモンスターを作った目的はなんだろう」
「多分だが……生物兵器の一種だ。探索者の代わりにダンジョンを探索させたり、戦争の道具にして売っ
「なるほど、確かに最近じゃ探索用のロボット開発が進んでるってニュースでやってたね」
「コイツはまさにそのモンスター版かもな」
なんか、コテコテの悪の研究所みたいなやつだ。きっと自分の欲望を満たすために研究してたんやろなぁ。
そんな薄い感想を頭に浮かべていると、ブロワーマンが提案する。
「なあ、こいつらの正体、気にならねぇか?」
「まあ、気になるわ」
「ボクも」
それを聞いた彼はニヤリと笑い、目の前の扉に手をかけた。
「じゃあよ、
「乗った!」
扉の内部は、多くの敵が存在していた。
ウチらは、その中へ恐れず堂々と入り込み、強襲をしかけた。
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