夏の落とし物
「線香花火」
線香花火を拾った
一度も火をつけられずに放置された花火
雨にさらされ湿気てしまった
その哀れな姿に僕は物淋しさを感じた
彼はもはや誰の記憶にも残っていないのか
「蝉の抜け殻」
赤茶色の抜け殻は
君のかつての姿
そこから抜け出た君は
もうここにはいない
君は旅立ってしまった
僕を一人残して
「熱」
熱い空気が甦った
僕はここに熱を落としていった主を知っている
そのそそっかしい落とし主は
僕の産声を聞いた古い友人である
この熱は彼が再びこの地を訪れるよりも前に消えてしまうだろう
そう思うと途端に夏が恋しくなった
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