夏の気配

   「草刈り」

 天を目指した草たちは

 

 非情な鎌刃によって

 

 誰も天に達することなく

 

 刈り取られた

 

   「夏雲」

 はるか天空にそびえ立つ城は

 

 誰が建てたのか

 

 誰のものなのか

 

 誰にもわからない

 

 ただわかるのは

 

 それが

 

 塵と水と空気でできているということだけである

 

   「鳴かぬ蝉」

 もみの木にとまる蝉を見た

 

 彼は鳴いていなかった

 

 年々上がる気温が

 

 彼の鳴く力を

 

 奪い取っているのか

 

   「夏の気配」

 払暁

 

 ひぐらしの鳴き声に

 

 目を覚ましたぼくは

 

 夏の気配を感じ取り

 

 ふたたび眠りについた

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