四月
「アルテミスよ」
オリオンが消え
勇犬たちも後を追って消えた
オリオンとアクタイオン
それぞれの悲劇が終わり
ぼくはアルテミスに魔性の
貴女の無自覚な美しさは
なんと罪深いことか
いっそのこと
貴方も
姿を消してしまえばいいのに
「再会」
久方ぶりに
陽の光の世界に出た
あまりの暑さに
ぼくはたじろぐ
ネックウォーマーをつけたことに後悔し
コートという荷物ができたぼくは
春との再会を祝う間もなく
コンクリートの箱の中へと戻った
「憂愁」
何かが終わったわけではなく
誰かと別れたわけでもないのに
春という季節は
どこか物悲しさを感じさせる
秋のそれとは明らかに違うものだ
「夜のシャトーにて」
シャトーを照らす夜桜
百余年前から続く
この景色を
貴方にも見せたかった
春が来るたびに
その人の顔が
記憶の彼方に消えていく
今はもう
どんなふうに笑っていたのか
思い出すことができない
春は何かを失う季節なのだ
「新たな悲劇」
オリオンが死して
アークトゥルスが輝くとき
アトラスとゼウスの争闘が始まった
この物語は
敗北の結末の筈なのに
ぼくを奮い立たせる
人を落涙させることだけが
悲劇の役儀ではない
ぼくは
ようやく春を見つけた
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます