夢をみたあとで
スギ
第1話 前日
「今日もたくさん謝ったな。疲れた。」
仕事を終え、家に帰る道で呟いた。
水曜だった。まだ今週は半分残っている。
人よりミスが多いことはわかっていた。ただ直そうと思っても全く直らない。
「なんか違うんだよな」
彼の口癖であり、大学を卒業した時から習慣となったこの口癖は、何が違うのか、どこが違うのかは本人にもわからなかった。ただ心の中に『違う』という事だけは確かにある感覚だった。
帰宅後、誰もいない部屋でネットサーフィンをし、コンビニ弁当を食べ、缶ビールを飲む。そして明日に備える。毎日同じことの繰り返しだが、疲れもあり、余計に考える頭をぼやけさせる。
これが『普通』なのだ。
きっとそうなのだ。違ったりしない。こうやって人生を繰り返してジジイになって終わるんだ。その間に出会いがもしかしたらあって、子供ができるかもしれない。家族の時間をもって幸せに暮らす時がくるのかもしれない。きっとそうだ。ただ、、、
何かが違う。
明日は木曜日。仕事の予定はぎっしり入っている。時刻は夜12時を迎える頃だ。
「歯磨きしよ」
夜の一連の作業を終え、ベットで横になった。
頭の中で仕事で怒られた事が思い出される。明日も同じ日がやってくる。
意識は落ちていく。
夢をみている。
自分でわかっていた。夢の中なのが。広い空間の中に大きな扉がある。扉の横には看板があり初めて見る文字が書かれていた。だがなぜか彼はその文字が読めてしまった。
『会議室』
そう書かれていた。ここで立ちっぱなしも変なので扉をノックしてみる。
「どうぞ」
中から返事があったため、扉を開けて中に入った。そこには白い髭を生やした老人が座っていた。
「座りなさい。」
言われるがまま椅子に座った。「初めまして。神様です。」老人は言った。
「君は他の人間とは違うみたいなんだよね。なんか異質なんだよね」神は言った。
「実は僕も思っていました。なんか違うんだよなって」
「ほう、どこが違うと思う?」神は尋ねた。
「自分は何をしているんだろう?でも何もできていない」
「何もできていないのに、何かをしなきゃならない。そう思っています。」
自分でも何を言っているか分からなかったが、神はうなずいた
神は質問を続けた。
「君はどうしたい?なんでもいいから希望を言ってみて」
「意味のある生き方をしたいと思っています。できれば今いる場所とは違う場所で」
神は少し考えている。髭をいじりながら、、、
「君は今、夢を見ている。そして夢を見続ける中で君はある星に行くことができる」
少し間があって神は言った。
「つまり君は寝たまま起きない事になる。今までの人の繋がりも無くなってしまう。悲しむ人もいるだろう。それでも君は何かが違うと。今を変えたいとそう思うのかい?」
神に言われて気がついた。何かが違うのではく、全てを変えたかったんだと。そしてやり直したいのだと。
「僕はその星に行きたいです。たとえ悲しむ人がいても、それでも僕は自分を変えたいです。」
神は少しにやついた。
「わかった。君をこれから星に飛ばす。だが最後にもう一度だけ聞くぞ?」
「これでいいのか?」
迷いはなかった。
「お願いします。」
神は指先で円を空中に書き、その中に何かを書いている。彼は待っているだけだが、心の中で思っていた。『やっと始まる』と、、、
「ではな。青年。いい夢を!」
「はい!行ってきます!!」
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