第11話エルside
半年ぶりの王都。
私達を待っていたのは
「は? スパイ……ですか?」
「そうだ」
「そ、そんな……何かの間違いです!」
「残念ながら間違いではない。それと、君がジャコモと呼んでいる男は他にも様々な罪を犯している事が発覚した。まぁ、今の処はこれといった証拠は見つかっていないが、間違いなく黒だろう」
「罪……」
「そうだ。それも組織ぐるみのな。今、
司祭の口から聞かされる内容は到底信じられるものではありません。
一体何故そのようなことになっているのですか?
「
「え?」
司祭の意図を掴み兼ねた。
ジッと司祭を見つめていると、溜息をつかれる。
失礼ではないですか。
「あの男と体の関係があった事は把握している。その事を踏まえて検査を受けろと言っているんだ。この一ヶ月の間に身籠っていないとは言い難いからな」
「なっ?!」
「何に驚いている?
「そ、それは……」
この方はデリカシーというものが無いのでしょうか?
そんな明け透けに言うなんて!!
ですが……本当に赤ちゃんがいるかもしません。
私は無意識のうちに両手をお腹に持っていきました。
愛し合った回数は数知れません。とても幸せな時間。あんな幸福な日々は始めてでした。もしかしたら、その可能性は十分考えられます。
私の赤ちゃん。
私の家族……。
幸福に酔いしれていた私は気付きませんでした。
机を挟んだ向かい側に座っている司祭の軽蔑するような目線に。
「妊娠はされてないようですね」
「そうですか」
医官の言葉を聞いてガッカリしました。
愛する人との子供が出来ていたらどんなに嬉しかったことでしょうか。
残念なことに出来ていませんでした。
意気消沈する私を無視するかのように医官は一枚の紙を手渡してきました。
「では、こちらの書類にサインをしてください」
「書類ですか?」
何の書類でしょう?
渡された紙に書かれた内容を読んでいきます。
そこには、私が国家反逆罪として明後日死刑に処されると書かれていました。
「な、なんですか?!これは!!」
私が国家反逆者?!
ふざけないでください!!
「落ち着いてください」
「落ち着け?!私、冤罪を掛けられているんですよ?!」
「いいえ。冤罪ではありません」
「わ、私が犯罪者だと仰るんですか?!」
「スパイに情報を売るだけでなく中央へ手引きしようとしたことは立派な国家に対する反逆です」
「そんなことはしていません!!」
「貴女の情人が
「何かの間違いに決まってます!!」
「司祭から話を聞いていなかったの?」
「聞きました!でもきっと冤罪を掛けられているんです!!」
必死の訴えも医官は耳を傾けてくれない。
それどころか「事実を認めて書類にサインをしなかった場合、貴女は外患誘致罪で処刑になるけど、いいの? その場合、一応、裁判は行われるけど有罪一択よ」と脅しをかけてきました。
何故、ただの医官にそんな事を言われないといけないんです!!
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