第壱章 大海原 

一、真珠(パール)と蒼珠(サファイア)

1、事の発端   

 ローゼはため息を付きながら窓を見た。

窓の外では色とりどりの紅の葉が舞っており、秋を思わせる。

「もう秋なのね」と呟きながら、目まぐるしい怒涛どとうの日々だった1年を振り返ってみる。 

   ◇◆◇

ー去る年の夏ー

「おめでとうございます‼️」

 朦朧もうろうとした夢をさまよっていたローゼはこんな言葉が聞こえてき、目を覚ました。

 「あら?」眼に写るのは天井。とても見慣れたいつもの天井なのに自分の状況に違和感を覚える。記憶を巡らすとあることに気がついた。

・・・寝た記憶がない。何をしていた?なぜ「おめでとうございます‼️」なの?

そっと目を開けると医者がいる。訳がわからない。

「おめでとう、とはどういうこと?」

そう聞く自分の声は震えている。

 医者は、

「え?あなた様に子供ができたのですよ。おめでとうございます」

と言った。


 2、3秒理解できなかったが、理解した刹那せつな、過去が走馬灯そうまとうのように巡った。

ー夫と共に隣島へ訪問しに行ったこと、帰ってきたときに最近酷かった胸のつかえや吐き気が一気に襲ってき、息も絶え絶えに医師を呼ぼうとしたことー

   ◇◆◇

 今思えば、なぜ子ができたと気づかなかったのか、と思う。

 いずれはこの島の統治者である夫の跡継ぎを産まねばならぬローゼには必須の知識だったのにと思い、ふと苦笑が浮かぶ。

 子を宿したとわかった後、双子だということが発覚した。

子ができたとわかった時もそうだが、夫の歓喜の仕様は異常だった。

『でかした‼️』

と叫んでいた気がする。正直、いずれ我が子可愛さに目が曇り、視野が狭くなるのではとひそかに心配しているのが現状だ。


 しかし、その後次の年の梅雨ごろ、出産予定の2週間前ほどから奇妙なことが起こった。

   ◇◆◇

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