(四)-7(了)

 そういうと母はさりげなく僕の手からビニール袋を丸ごと取った。そして僕に一つ中身を渡すと、妹を助手席側に乗せて、中身がまだ六個も残っているビニール袋を妹に手渡すと、助手席のドアを閉めた。

「そうか。わかった見ておく」

 父は口をモグモグさせながら返事した。

「明日からもよろしく頼むわよ」

 そう言うと母は運転席の方に回った。

「当たり前だろ、夫婦なんだから。お前も頼むぜ」

 父もそう言うと、自身の車に戻った。

 僕も父の車に戻った。

 助手席に座ると、運転席の父を見た。

 父は、ふぅと一息つくと、僕の方を見た。

「ありがとな、気を利かせてくれて。あれがなかったらヤバかったぜ」

 そう言うと父は僕に親指を上げた拳を見せてくれた。


(了)

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母と父の好きなもの 筑紫榛名@12/1文学フリマ東京え-36 @HarunaTsukushi

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