(四)-5

 母は右手で僕の手の下に手のひらを上向きに広げたので、僕はその上に芋小町を置いた。

「ありがと。なに、これは?」

 そう言った母は、手のひらに乗せられた物が「芋小町」と気づいた。

「あら、これ、芋小町じゃないの。もらっていいの? ありがとう」

 母は急に弾んだ声で包みを開いてそれをかじり始めた。

「あ、お前、それ俺にもよこせ」

 そう言って父が近づいてきたので、僕はそれを一つ、ビニール袋から取り出して父に渡した、


(続く)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る