(三)-8

 翌朝は早かった。時間は六時で、まだ空は暗かった。七時台のフェリーに乗るのだ。

 車が船のゲートを乗り上げて船内に入っていく。外は暗かったが、船の中は灯りがついていて明るかった。

 誘導員の誘導に従って、父は指定の場所に車を停めた。そしてエンジンを止めると父は後ろを振り向いて「降りるぞ」と言ってドアを開けてキャビンから出た。

 僕も助手席に移動してから車を降りた。

 駐車スペースから上の階に上がる階段に向かうと、その前で母と妹に出会った。妹は眠気眼(まなこ)でぼんやりしていた。母たちの車もこの便に乗っていたのだ。

 父と母は、眠そうに「おはよう」と挨拶し合ったが、急に思い出したように「フンっ!」と互いに顔を背け合った。

 父は僕に「さっさと行くぞ」と言うと、さっさと階段を上がっていった。僕もそれに続いた。

 後ろでは「さあ、行くわよ」と妹に言って階段を上がる音がした。

 そして僕らは上のフロアのドライバー専用ルームに入った。そして僕らは出港の霧笛を聞くときにはいびきをかく勢いで寝始めた。


(続く)

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