(一)-7

「だから、これは男のロマンなんだよ! これがなきゃ面白くねえだろうが!」

 父は窓を下げながら怒鳴り声を上げた。

「あんたバカじゃないの! そんなの付けなくったって、十分仕事できるでしょうに!」

 父の声の後、すぐ母の怒鳴り声が聞こえた。

 父はドアウインドウを上げた。そしてシフトを二速に入れると、ドアミラーを見て安全を確認しつつ、車を発進させた。

「まったく、うるせえんだからよ。このバンパーの良さが理解できねえとか、意味わかんねえよ」

 父はそうぼやいた。

 そうして車は発進した。市場の建物をぐるりと一周するようにして、もと来たゲートから外に出た。そして最寄りの入口である豊洲から高速道路に乗った。


(続く)

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