32.花火大会
今回は人によっては不快・不潔と感じるシーンがあります、ご了承下さい。
※シモの話ではありません。
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──駿太朗 View
花火が見える位置に陣取り、シートを敷いてクッションに2人で横に並んで座る。
まだ開始前1時間くらいだけど相当な人が居て、それなりに良いポジションを取れたのは幸運と言える。
ここの花火大会は去年も睦巳と2人で見に来ていて、男同士だったせいか、微妙な居心地の悪さを感じたものだけど、今年は違う。
睦巳が女の子だからだ。そして可愛い。
去年と同じだけど去年とは違う、何を言っているか分からないけどそれで合ってる。
「睦、ここに座らないか?」
いつものように俺の前、あぐらの上を指して言う、いつもなら嬉しそうに応えてくれるんだけど今日は違った。
「あー、……いや、今日はそこは止めとくよ」
「ん?どうしたんだ、別に遠慮しなくても良いんだぞ」
「いや、遠慮とかじゃないんだ、気にしないでくれ」
「……?」
うーん、考えたけど分からない、初めて拒否された気がする、誘えばいつも応えてくれたのに……。
って、そりゃそういう気持ちの時もあるだろう、一度拒否されたからってなんだ、今までたまたまそういうのが無かっただけだ、落ち込むんじゃない。
少しだけ空気が悪くなったような気がして、俺の気の所為だと思いたい。
俺は断られたのが相当ショックだったらしく、テンションがだだ下がりしている事に気付いた。
たった一度拒否されただけでこの体たらく、俺がどれだけ睦巳に甘えていたかがよく分かる。
空気と気分を変える為に適当に話題を振る。
「そういえば去年もここの花火大会見に来たよな、周りが家族かカップルだらけの所に男2人でさ」
「ああ、合ったな~、結構恥ずかしかったなあれは」
「え!そうだったのか、全然恥ずかしそうに見えなかったから、睦はメンタル強いなとしか思わなかった」
「そう見えないようにしたからな、駿は花火が始まるまでキョロキョロしてて落ち着かなかったよな」
「俺たちみたいな仲間が居ないか探してたんだよ、男だけなのが他にいても大人数だったりで2人きりってのは俺たちしか居なかったけど」
懐かしい、あれはあれでやっぱり楽しかった。
「……それにしても、うん、ちゃんと覚えててくれてて嬉しいよ、それに駿で良かった。俺たちの思い出は一杯あるからな」
「そうだな、小学校からの長い付き合いだしなあ」
「それにしても……あ~あ、あの時はまさか駿とキスまでするような仲になるなんて思わなかったな~」
「俺だってそうだよ、こんなにも睦の事が──いや、睦が可愛い女の子になるなんてな」
なんだ今のは、俺は一体何を言おうとしていたんだ。
「で、どうだ今年は。こんなに可愛い女の子と一緒だぞ、嬉しかろう」
「嬉しいよ、睦のお陰で堂々としていられる、キョロキョロしなくて済んだ、睦はどうなんだ」
「俺か?……そうだな、嬉しいよ、でも多分、駿とは違う嬉しいかもな」
「なんだよ違う嬉しいって、どういう意味なのか教えろよ」
「俺は女の子になったんだ、そりゃあ違うだろ」
そう言って睦は顔を背けた。
どういう意味なんだ、俺はカップルみたいに見られて嬉しいのか、という意味で聞いてみたつもりだったけど、違うのだろうか。俺の嬉しいもそういう意味だったんだけど。
違う意味と考えるとなんだろうな、また此処に2人で来られて嬉しい、とか?あーなんかそれっぽいな、女の子になっても2人で来られて嬉しい、これだな。
◇◆◇
花火大会が始まった。
俺は花火が小さい頃から大好きで、特に近くで見る時は目の前に大きく広がる花火と、大きな音と、身体に伝わる音の波が心地良いと感じる。
「たーまやーっ!!」
睦巳が口に手を添えて、大きな声で叫ぶ。
左手側にいる睦巳を見て、変化に気付く。
爪を少し伸ばしていて、指が細く長く見える。
「睦、爪伸ばしてるのか?」
睦巳は自分の爪を見て、嬉しそうに微笑んだ。
「お、気付いたか、女の人って爪伸ばしてるじゃん、俺もやってみてるんだ、そしたら結構効果があって、指が細く長く見えるんだよな、分かるだろ?」
分かる、指が普段より細く長く、そして、それを口に添えている睦巳が、とても
「綺麗だ……」
俺は思わず呟きが漏れて、即座に自分の口を手で覆った。
それを聞いた睦巳はニヤアを笑みを浮かべ、喜色満面で俺を揶揄ってくる。
「なんだ今のはー?めっちゃ本音っぽい呟きじゃんか、んふふ、駿も俺の虜だな、爪を伸ばした事がこんなにも効果があるなんてな、女を磨いてみるモンだな」
何も応えられず頬を赤くして俯いた。
くそっ、分かってるよ!認めるよ虜だよ、俺は睦巳の新しい一面に一々ドキドキしてるよ!
嗚呼くそっ、認めてしまうとこんな揶揄いでさえ可愛くてしょうがない、こっちはなあ、抱き締めたくなる衝動をいつも我慢してるんだぞ!
さらに調子に乗ったのか睦巳はとんでも無い事を言い出した。
「どうだ、駿、そ、そのさ、俺の手を、さ、触ってみるか?」
思わず睦巳を見ると顔を真っ赤にして目を逸らし、左手を拡げてこちらに向けていた。
「良いのか?」
「気が変わらない内にしろ、確認すんな」
睦巳の手を取り、見て、触り、確かめる。
くすぐったそうにしている睦巳も可愛いけど、今は手に集中しよう。
暑いからかじっとりと汗をかいている、そして全体的に筋肉が少なく柔らかい、細いからすぐに骨だと思われる硬いものに当たる
そして指だけど、こんなに細いのに柔らかさをしっかり感じて、色白なのも相まってすぐに折れてしまいそうなほど儚さを感じる。
自分の指と比較すると比べ物にならないくらい細く、俺のように節くれだってなく、綺麗な曲線を感じる。
不思議なもので、指をよく見ると少しグロテスクに感じつつもエロさを感じる。
じっと見ていると感情が湧いてくる、凄く、……凄く舐めたい。
きっと汗の味しかしない、分かっていてもそういう衝動が抑えられない。
そういえば睦巳はここに来る前、俺の首を舐めて吸った、そのお返しという事にしよう、それなら言い訳にもなる。
衝動を抑えなくて良い理由を見つけた俺は遠慮無く睦巳に言った。えーと確か……。
「なあ、指舐めて良いか?良いよな」
「え!?」
まず手の平をぺろりと舐める。うん、まず汗の味がして少ししょっぱい、そして手だからだろうか、複雑な色々な味が混ざり合った味がする。本当は口にしてはいけないものも混じっているかも知れないが構うものか。
睦巳とは違う味がしてから少しだけ睦巳の味。
そのまま手の平をベロベロと舐め回し、味わう。
睦巳は手を引き戻そうとしているが動かせないようだ、もう分かっているはずだ、俺の力には敵わないという事が。大人しく俺に味あわされていろ。
「駿!やめ!くすぐったいから!やめて!」
そんな睦巳の声も今の俺には心地良い、本当に良い声だ、もっと聞かせてくれ。
そしてそんな事を言いながらも手を握り込むような事はしない、本当に嫌なら握って舐められないようにするはずだ。
存分に手の平を堪能した俺は、次のターゲットに狙いを定める。
やはり人指し指だろうか、何か特別感があると思う。
指先をぺろりと舐め、咥える。
そのまま人指し指の全てを舐め尽くすように舌を纏わり付かせる。
その間、残った指は片手でマッサージするように指を軽く挟んで扱くようにして柔らかい指の感触を楽しんでいる。
人差し指を甘噛みし、柔らかさを味わい、人差し指先端を執拗に舐め、吸う。
睦巳はというと、俺が舐め回すたびにんっ、ふっ、と軽く悶えてるように見える。そして少し涙目だ、あー、可愛い。
指を舐められているだけなのになんて声を出しているんだ。
そして俺はというとその声が聞こえると気を良くして、さらに執拗に舐め回し、また睦巳が声を漏らす、という状態だった。
手の平と指を堪能し、すぽんと口を離し、絡めていた指も解放する。
睦巳を見ると呼吸が荒く、俯きながらも俺を見ていてその瞳は睨みつけるというより、ただぼんやりと見ているだけに近いものを感じた。
「はい、ご馳走様でした」
「ふー、ふー」
「睦巳も俺の首を吸って舐めたからな、これでおあいこだからな」
一応先んじて考えておいた言い訳を話す。
これで納得してくれるだろうか。
花火がドンと上がる、あ、夢中になっていてすっかり忘れていた。
さらに周囲を伺うとなんとなく周りの人達がこちらをチラチラと見ているな気配がする、……少しやりすぎたか。
「駿……」
「ん?どうした?」
「どうした?じゃねえ!やりすぎだこの変態!花火どころじゃなかっただろ!あんな……あんななあ!」
「まあまあ落ち着け、おあいこだって言っただろ」
「おあいこな訳あるか!もう行くぞ!」
「え、なんだよ、もう行くのか?」
睦巳は立ち上がり、荷物をまとめて俺の手を取り引っ張って花火会場を後にした。
◇◆◇
人気の少ない場所で睦巳は立ち止まり、辺りをキョロキョロと見回す、どうしたんだ一体。
誰もいない事を確認すると、俺に向き直り、飛びつくように俺にキスをしてきた。
そしてその勢いのまま俺の口腔内を貪り、舌を絡めてきた。
なるほど、どうやら火が付いた、というやつらしい、俺は満足していたし昂ってはいなかったけど、応じる事に何の問題も無かった。
睦巳が満足するまでそれは暫く続いた。
お互いの口が混ざりあうのではないかという程までに続き、やっと口を離した。
「やっと落ち着いた……ああくそ、絶対ぐちゃぐちゃだ……」
何やら睦巳がぶつぶつ言っているが何の話だか分からん。
「なあ駿、ああいう事はさ、やるなとは言わないけど、やるなら家でやろう……な?」
「お、おう、分かった、確かに人前でやる事じゃないな、すまん」
「うん、今度から気を付けてくれれば良い」
睦巳を家まで送ったけど、その日は抱く事も口付けする事もなく、そのまま別れた。
俺も今日は十分堪能したし求めなかった。
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