23.お風呂
──睦巳 View
夏祭りから駿の家に帰る時、今日も泊まる事を伝えた。
「そんな所だと思ってたけど、まさかまた腕枕してくれって言うのか」
「当たり前だろー?これから一緒に寝る時はずっとして貰うからな!」
「はあ、まあいいけどさ、何かあっても知らないぞ」
「良いよ、その時は責任取ってもらうから」
「またそれかよ、言っとくけど、何時までも俺の理性が持つと思うなよ」
「何時まで保つか楽しみだな」
「……はぁ、人の気も知らないで……」
手を出してくるにしてもちゃんと理性は残ってて欲しいし、どうせならちゃんと正面から来て欲しいけどね。
しかし駿が理性を無くして襲ってくるのってイメージ出来ない、やっぱり怖いのかな、うーん、分からん。
駿の家に着いて、駿の部屋で時間を潰す、夏祭りの話題でそれなりに盛り上がった。
「そろそろ風呂入れってさ、睦から先入るか」
「いや、今日は駿が先に入ってくれ、俺は後から入るから」
「ん?睦の方が上がった後も含めて時間掛かるんだろ?」
「いいから先入れって、後から入るからさ」
「まあ良いけど、じゃあ先入るぞ」
駿は着替えを持って風呂に行った。
んっふっふ、今回は此処が違う所だ!
俺は後から入ると言った、そう!文字通り駿の入った所へ後から入る!
わざわざその為に大きめのタオルを家から持ってきていて、身体を隠す準備は万端だ。
今回の目的は駿が風呂に入ってる所へ入って行って、頭や背中を洗ってやるんだ!
ついでに湯船にも一緒に入りたい。
あ、一応言っとくと背中をおっぱいで洗うとかそういうのは無い。
あくまで普通に洗う。
これで裸と裸の付き合いをしてさらに距離を詰める予定。
んふふ、そろそろいいかな?
洗面所に入り、風呂の外から様子を伺う。
見た感じ、洗い始めた感じかな。
とても緊張している、当たり前だ、タオル一枚の下は裸なのだ、しかもこれから駿が入っている風呂に乱入する、心臓は早鐘を打ち鳴らし、緊張で呼吸が荒くなっている。
でも今を逃すとタイミングを失う。よし!入るぞ!
身体を隠す為の大きいタオル一枚を身体に巻き、気合を入れてガラッと扉を開け、何事も無いように入っていく。
駿は丁度頭を洗っていて、下を向いて目を瞑っているようだった。
ただ空気が流れ込んだ事で扉が開いた事は察知したのだろう、動きが止まり、こちらの様子を伺っているようだ。
やはり細マッチョの駿の背中は大きく、脂肪が少なくて筋肉質で、カッコいい。
多分男の時にみてもカッコいいと思うだろう。
お尻なんかも少し見えてて、全体的に無防備だと感じる。風呂で頭洗ってるんだから当たり前なんだけど。
背中から抱き着きたい気持ちが湧いてくるけど、それは我慢だ、今日はそういうのじゃない。
「よう、駿、頭洗ってやるぞ、目瞑っとけ」
「──はぁ!?待て待て!睦か!?」
「おう、美少女が頭を洗ってやるって言ってんだ、素直に洗われろ、そのまま身体を後ろに向けて、顔を上げるなよ、目は瞑ったままな」
「待て待て!マジで言ってんのか!マジでそこに居るのか!」
「マジで居るぞ」
背中を指でツーっとなぞって後ろに居る事を理解させる。
ビクンを背中を仰け反る駿が可愛いじゃないか。
「マジか!?……分かった!分かったから其処のタオル渡してくれ」
「そうだな、駿も隠したいもんな、ほらよ」
タオルを取って肩に掛けてあげる。
受け取ったタオルで股間部を隠した駿は下を向いたままこちらへ振り向いた。
「目は開けるなよ、頭から手を退けてくれ、俺が洗うからさ」
そう言うと駿はマジかーと言いながら手を自分の股間部へと持って行き隠した。
俺は膝立ちになり、正面から駿を見る。
はあー、良い身体だ、男の時の俺なんかより遥かに良い身体だ。引き締まっていて、筋肉が付いている。
「睦、まだか?ちゃんと其処に居るのか?」
おっと、見惚れていた。
少しシャンプーを手に出して頭を掴んだ、そのまま揉み解す様に適度に力を入れつつ頭を洗ってやる。
「どうだ?少しは気持ち良いか?」
「ああ、人にやってもらうとやっぱ気持ち良いな」
そうだろうそうだろう、美容院のプロほどじゃなくても気持ち良いなら良いや。
そのまま気持ち良く洗っていると駿は話しかけてきた。
「なあ、もしかしてコレが目的なのか?」
「そうだぞ、言ったろ、後から入る、って」
「後から入るってそう言う意味だと思わないだろ、先週は同じ言葉で俺が上がってからだったぞ」
「まあ良いじゃないか、どちらも間違ってないんだし」
「いややってる事は大分違うんだけど?」
「気にすんな気にすんな、それに美少女に頭を洗ってもらうなんてそうそう経験出来ないぞ」
「そうだけどお前なあ──ぷわっ!」
駿が話している最中にシャワーを掛けてシャンプーを洗い流し始めた。
「はいはい喋ると口に入るから黙ってようね―」
頭をシャワーで洗い流しつつ、頭をモミモミして流す。
「っと、こんな感じかな、よーし、じゃあもう1回後ろ向いてー」
駿はもう1回後ろを向いて俺に背中を見せる。
「もう頭上げて良いぞ、目もな」
「良いのか?本当に良いんだな?」
「ああ、大丈夫だから」
駿は髪を後ろに整え、目元の水分を払って目を開けた。
そこには鏡が有って、駿とその後ろにいる膝立ちの俺を映していた。
「マジかよ……」
「なんだよ、まだ信じてなかったのか?」
「いやどっちかっていうと、信じたくなかったって感じだな……」
「なんだよそれ、次は背中を洗ってやるからな、ボディソープ貸してくれ」
「ホイ、ってかタオルどうすんだ」
「ああ、タオル要らない、俺はいつも手で洗ってるから、肌に優しくて良いんだぞ」
そう、俺はいつも手で身体を洗ってる、タオルだと肌を痛めるってのを何処かで読んでからそうしてるんだけど、これが意外と悪くない。
「手で洗うのに慣れたらタオルに戻れなくなるからな、いくぞ」
ボディソープを手に出して少し泡立て、背中の上部に両手を付ける。
手の平で背中全体を満遍なく、ボディソープを塗り伸ばしながら洗っていく。
俺の背中と違って柔らかいだけじゃない、少しゴツゴツとした大きくて筋肉質な背中が俺の手によって洗われていく。
は〜、ヤバい、ちょっとハマりそうだ。
背中だけのつもりだったけどサービスして肩や腕も洗ってやろう、決して駿の身体を洗うのにハマりつつあるわけじゃないからな!
そのまま肩と首の後ろをボディソープを補充して洗っていく。
やべぇ、逞しい肩って良いな、両肩を洗った後に首の後ろだけ……と思っていたけど誘惑に負けて首の後ろから横、前まで洗って、そのまま鎖骨までしっかり触った、じゃなくて洗った。
ヤバいなコレ、興奮してきた。
ちなみに駿はとっくに股間部を隠すような動きをしている。
「次は右腕な、ほらほら出して出して」
「いやいや腕は自分でやるって」
「良いから出せって」
ちょっと無理矢理に腕を引っ張り出して、抑えていた腕を洗い出す。
肩口から腕を両手で持って扱くようにして洗い、手と指は両手の平で挟み込む様にして、節くれだった指の間も恋人繋ぎのようにしてしっかり扱き洗った。
続いて左腕も同じ様に、だけど夢中になりすぎた俺は両手を使った激しい動きで自分のタオルが解けるのに気付かず、勢いのままに駿の背中や腕におっぱいを押し付けていた。
「……!?……おい睦!タオル外れてるぞ!」
その声にハッとして気付く、確かにおっぱいを背中と腕に押し付けている。鏡を見ると駿とも目が合った。
「ッ!!」
もし見えてしまった場合、駿を揶揄いながら隠す、駿になら見られても良い、つもりだった。
だけど現実は声にならない声を上げて、両手で隠し、慌てて隠しつつタオルを拾って後ろを向き、急いでタオルを巻き直す、という行動だった。
揶揄うなんてとんでもない、やらかした事と恥ずかしさでそんな事は出来なかった。
多分、駿の身体を洗っていくにしたがって男と女の身体の差、違いを自覚してしまったからだろう。
それに加え駿の腕を洗う時に僅かにだけど、見えてしまったのだ、臨戦態勢なソレが。
分かっていたはずでも、そういう目で見られていた事実が其処に有ると余計に恥ずかしさを増させていた。
余りの恥ずかしさで血が頭に上り、もはや正常な思考は出来ない状態になっていた。
もう洗い続ける事は無理だ、それに少し落ち着く時間が必要だ。
身体を隠す為にも1回湯船に入って落ち着こう。
「駿!下向いて見ないで!」
「ッ!あ、ああ、すまん!」
駿は鏡越しだけどこっちをチラチラと見ていた。
この言葉で一応駿は下を向いてくれた、今は駿も動けないはず、今の内に湯船に浸かろう。
湯船に入る時、タオルをどうするかで悩んだ。
頭は纏めてアップにしているから湯に付く事はないだろう、だけどタオルをこの湯船に付けて良いものか。
しかも1回床に落としてしまったタオルだ、不味いと思う。
……仕方ない、タオルは外して入ろう。
タオルを横に置き、裸で湯船に入った。
両手で胸を隠し、両膝を合わせて縦に、いわゆる体育座りのような姿勢。
「駿、もう大丈夫」
「──ああ、って!そっち入ってるのか、まあそうなるか」
「悪いけど残りは自分で洗ってくれ」
「元から自分で洗うつもりだったから良いけどな、ありがとな、気持ち良かったよ」
そうか、気持ち良かったか、それは良かった、俺も恥ずかしい思いをした甲斐があったよ。
少しでも気を紛らわす為に話し掛けた。
「何処が一番だった?」
「そうだな……やっぱり背中かな、普段はそこまで綺麗に洗える場所じゃないからな。しっかり洗って貰った気がする」
「そっか、……良かった」
「あー、それと手で洗うのが思ったより良かった、てか気持ち良すぎた、大変だった」
「だろ、気持ち良かっただろ」
そう言って気付いた、気持ち良すぎたの意味がそういう意味じゃなかったんじゃ無いかと、多分そういう意味だ。
俺は顔を真っ赤にして駿を見られなかった。
それにしても……押し付けた時に見えたのだろうか、いや、普段は見えても良いとは思っていたけど、そのつもりじゃないタイミングだったから、見えたとしたらやっぱり恥ずかしい。いやそもそも押し付けた時点で相当恥ずかしい。
駿は顔、身体前面、足、足先と順番に洗っていった、そしてそこで止まった。
「えーと睦、悪いんだけど向こう向いてて貰えるか、尻とか洗うから」
「……分かった」
言われて気付く、座ったままじゃ股間周りは洗えないか、
俺はそっぽを向いて、視界に入れないようにした。
「もう良いぞ」
その言葉で駿を見ると洗い終わったようで、手で洗いながらシャワーでボディソープを流していた。
そして全て洗い流し終わったようで、俺を見た。
「なあ、俺も湯船に浸かりたいんだけど、どうしたら良い?」
「!?」
そりゃそうだ、順番に行けば駿が湯船に浸かり、俺が身体を洗う流れだ。
でも、正直、今湯船から上がりたくない。
どうしよう、駿に湯船に入るなとは言えないし、どうしよう。
そうだ!幸いこの湯船は少し大きめだ、駿も一緒に入ればいいんじゃ?
というか一緒に入りたいと思っていたし、対面でも入れそうだ。
「あのさ、駿も入れば?まだ余裕あるし」
「え?いやー、それはどうかなー」
「大丈夫だって、それにほら、入る時は見ないようにそっぽ向いて手で隠すからさ、ほら」
横を向いて、胸を隠しつつ手で目を隠した。
多分湯船の上からは下までは見えないはずだ、湯面が揺らめいているし。
だから大丈夫、多分。
「んー、分かった、絶対こっち見るなよ」
駿が動いた気配がする、覚悟を決める時間が必要だったのか少し間があり、そして湯船へ入る音が。
思わずチラッと見た、出来心で、見ちゃったんだ、駿の横から臨戦態勢なソレを。
なんでまだその状態なんだよ!
「ん、今見た?」
「見てない見てない!」
そのまま駿はこちらを向いて、体育座りになっている俺の身体に触れ合わないように股間を押さえながら外から俺の両足を囲むように座った。
「もう良いぞ」
「ふー」
そのまま胸を隠し直した。
もう俺は2回見たソレが焼き付いていて、何度も脳裏に浮かぶ、落ち着かない、おかしい、つい1ヶ月前には俺にもソレがあったんだ、見慣れているはずなんだ、なんでこんなに興奮しているんだ。
「あー、そういや睦は俺のを見てもなんとも思わないか、良く考えたらこないだまで男だったんだよな、隠す意味って無いか」
そう言って手で隠すのを止めて両手を広げて寛ぎ始めた。
こいつ!吹っ切れやがった!?
なんとも思いますー!今めっちゃ興奮してますー!ソレどころか身体を見ても興奮してますがー?
思わず下を見るが湯面がゆらゆらしてそれはぼんやりとしか分からない。
男の時はわざわざ見たいとは思わなかったし、気になるのはどっちが大きいかくらいで、かと言って実際に比較なんかしないし、当然興奮なんかしなかった。一体俺はどうしてしまったんだ。
「うーん」
駿が多分俺のほうの湯面を見ながら呟いた。
「どうした?」
「意外と見えないもんなんだなって思って、ゆらゆらしててさっぱり分からないな」
隠す事を止めた駿は随分と余裕が出てきたらしい、じっと湯面を見て俺のソレを見ようとしていた。
「見んなよエッチ、それに元気過ぎだろ」
「良いじゃん、肩とか濡れててエロいんだからしょうがないだろ」
「ふー、偶には一緒に風呂入るのも良いな、また入ろうな、それじゃ先上がるよ」
完全に余裕を取り戻した駿は一応手で隠しながらザバッっと立ち上がり、ってまだ臨戦態勢なのかよ!隠しきれてねーよ!
「ちゃんと隠せバカ!」
「え、別にいいじゃん、なんだよ、まさか興味あるのか?」
「……いや、別に無いけどさ……その状態は男でも隠すだろ普通……」
「一応隠してるじゃん、それより睦こそじっと見てないで目を逸らすくらいしたら?」
確かに!でも目が離せないんだ。
どうみても興味あるようにしか見えない、これは駿の思惑どおりかも知れない。
駿はそのまま身体を軽く拭いて風呂から上がっていく迄の間、俺はずっと視線を逸していた。
駿が脱衣所から出ていったのを確認して湯船から上がり、身体を洗う。
凄く興奮していて、身体も興奮を覚えていた。
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