13-1.恋人 前編
今回は少し長くなったので前後編に分割して2本を投稿します。
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──睦巳 View
テスト期間が終わって金曜、テストが終わってしまった。
また暫く駿と一緒に帰れないし、夜も一緒に居られない。
もうさ、ずっとテスト期間が良いんだけど、そしたら毎日一緒に要られる時間が長くなるのにな。
駿は部活があるから基本的に一緒に帰ることが出来ない、もうそれだけで寂しいのに帰った後も会うことは無くて、せいぜいメッセージと電話くらい、シュンニウムが枯渇するのは間違いない、どうしよ。
駿に貰った謎生物のキーホルダーはちゃんと付けてる、駿も付けてるからお揃いだ。
それに見慣れてくると段々可愛く見えてきた、うーん、多分。
まあ可愛さは関係なくて、駿とお揃いなのが一番大事だから何でもいいんだけど。
◇◆◇
お昼休憩時に女子と雑談している所に珍しく男友達が声を掛けてきた。
前にお昼誘ってきた男子だ。
「なあ、矢内、A組のやつから聞いたんだけど、A組の宗清と付き合ってるってマジ?」
──え!?……なにそれ、初めて聞いたんだけど。
「え?やっぱり付き合ってたんだ、なんだよ言ってよー」
「ちょっと待って、それ誰から聞いたの?」
話していた女子がやっぱり付き合ってたんだとか言ってるけど、付き合ってるなんて言ってないよね?
「ああ、さっきも言ったけどA組の友達、なんか昨日の打ち上げで宗清が付き合ってるって言ってたってさ、でマジなん?」
んー、駿が言ったの?本当は違うよって言うべきだと思うけど、駿が言ったなら何か考えがあっての事かも知れない、駿がそんな適当に答えるとは思えないし。
うーん、どうしよ、……うん!俺は駿を信じる!乗っかろう。
「うん、駿が言ったなら隠してもしょうがないよね、付き合ってるよ」
「お、でた!駿呼び!これは付き合ってますわー、てか付き合ってたんだね、まあそうとしか見えなかったけど」
「えー、マジかー、そっかー、マジかー」
男友達がめっちゃ凹んでる、やっぱり君そうだったのか、残念だったね、俺は告白とかされずに良かったと思ったけど。話友達なら続けていけるよ。
あれ?もしかして駿の狙いはそういう事?
よく見ると、男友達連中の一部が凹んでるのが分かる、あー思ったより居たのね。
「ありゃー、睦巳ちゃん男泣かせだねぇ」
「そのつもりは無かったんだけどねー」
「んー、まーしょうがない、矢内、これからもよろしくな」
「そうだね、よろしく」
うん、話友達として。と言っても駿が嫌がったらそれもお断りするけどね。
「ねー、今度さ、宗清くん彼氏として紹介してよ、ついでにその友達とかも」
「えー、合コンみたいな事ー?どうしよっかなー」
なんだか、駿が彼氏、恋人だと思うとドンドンテンションが上がってくるのが分かる、あー、ヤバいわこれ、なんか幸せな感じする。
でも1回ちゃんと駿にどうして付き合ってるって話になったのか、どういう気持で言ったのか聞いておきたい、俺だけ勘違いして浮かれるのもやだし。
あーでも駿が彼氏かー、親友だって言ったのに困るな~、勝手に関係を進めたら駄目だよなー。
いやー、どうしよ。
ほっぺたが緩々になっていて、ニヤけが止まらない。
◇◆◇
その日の放課後、今日から部活が再開されていて駿もサッカー部に行っているはずだ。
だからサッカー部にいけば駿を捕まえる事が出来るという事、最悪終わるまで話が出来ないかも知れないけどそれくらい待とうじゃないか。
サッカー部は……と、あそこかな、サッカーコートの中に入らず外で待つか。
さて駿はどこかなーと、意外と部員が多くてちょっと分からないな、まあ暫く探すかな。
何人かが俺に気付いたみたいでこちらを見ている人が増えてきた。
そしてその中に駿を見つけた。
気付いて貰おうと小さく手を振った。
何故か関係無い男子が小さく手を振り返してきたりして、誰だお前は。
駿は大きく手を振り返してきて、直ぐに分かった、そういう風に分かりやすく返してくれるのは流石駿だと思う。
気付いた事を知らせたくて、俺もピョンと跳ねて大きく手を振った。
なんで嬉しくなると跳ねたくなるのか。
練習風景を見ていたけど、思っていたより見ていられる、まあ駿しか見てないけど。
そして気付く、周りと比べても駿は格好良いという事に。顔だけじゃない、運動神経も抜群でサッカーが上手い。
格好良い。小学校からずっと友達だったけど、今になって気付くなんて、ずっと見ていられる気がする。
もしかして、俺が女の子になったからそう感じるのか?
ああでも、それなら納得が行く、今までの格好良いと感じる感情とは何か違う、男時代に可愛い女の子を見るような、そういう目で駿を見ている。
そうだ、今は恋人、彼女なんだ、そういう目で見て何が悪い。
その後、休憩時間だろうか、駿がこっちに向かってきている。
ヤバい、急に緊張してきた、駿が、彼氏が、恋人が、こっちに来てる!
えーっと何を話すんだっけ、あ、あれ?えと、なんだっけ。
見る事に夢中になって話す内容を忘れ、頭が真っ白になっている。
駿が俺の所に来て、声を掛けてきた。
「おーい、どうしたんだ、何かあったのか?」
ヤバい、何を話すか忘れてる。なんだっけ!?
「いや」
「どうしたんだ、マジで何かあったのか」
あ!思い出した、俺が彼女って事になんでなってるか、を確認するんだった。
「──あの、俺、さ、……駿の、……彼女って、事に、……なってる?」
それを言うのすら凄く緊張する、なんでこんな恥ずかしい事を確認しているんだ。
駿の彼女って!
多分俺の顔は真っ赤になっていると思う、めっちゃ恥ずかしい。
「えーとな」
「……うん」
「結論から話すと、今、睦は俺の彼女って事になってる」
「!?……やっぱりそうなんだ……」
マジでやっぱりそうなんだ、でもなんで……。
「経緯を話させてくれ」
「うん」
ちゃんと聞かせて欲しい、なんでそうなったのか。
「昨日の打ち上げでな、話題に上がったんだ、毎日俺を迎えに来てた甲斐甲斐しくて可愛い女の子がいたよな、って」
「そんな甲斐甲斐しくて可愛いだなんて……」
「でまあ当然、俺に話が振られるわけだ、彼女なのか、と」
「まあ、そうなるよね」
毎日迎えに行ってたからなあ、でもそんな甲斐甲斐しいとか可愛いとか言われてたなんて。
まあでも確かに、そりゃ駿に話が振られるよね。俺もそこに居たら聞きたいもん。
聞いた理由としては前に話ししていたお互いに恋人が作れないよねって話と、そこから発展していっそ恋人同士なら面倒臭い事が無くなるだろうという考えだった。
面倒臭い事が無くなるってのはまさに今日のお昼休憩にそれを実感してしまった。効果テキメンだった。
だから駿の考えは正しいと思う。
だけど、だけどね、俺は彼女だ恋人だと浮かれてたんだよね、さっきまで。
凄く嬉しくなっていて、幸福感を感じていた、それがさ、嘘だったなんて、そんなの酷いんじゃない?
ちょっと駿に意地悪をしたくなった、それくらいしても罰は当たらないだろう、だって結構ショックだったし。
「なるほどそういう理由だったんだ、でも勝手に恋人にしちゃうなんて酷いなあ。
俺達はそういう関係じゃないのにさ」
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