5.男と女で違う事


──睦巳 View


更衣室内で店員さんにサイズを測って貰った。

バストサイズはアンダー69.5のトップ95でG70だった、自分でも分かっていたけどかなり大きい、しっかり挟めるサイズだ。


「どの様な物をお求めですか?」

「えーっと、可愛くてセクシーなの、かな」

「なるほど、いくつか持ってきますね、色の好みはありますか?」

「あ、はい、白系か薄い明るい色ですかね」


いくつか持ってきて貰って、実際に教えてもらいながら着けてみた。

色はこの系統で良いとしてデザインはどんなのが良いのかなー?

本人に聞いてみるか。


「おーい、駿、ちょっとこっち来てくれ。」

「ん?どうした」

「どんなのが良いと思う?こんな感じなんだけど」


カーテンを少し開けて俺の下着姿を駿に見せてみる。


「え?──ッ!バカッ!おまっ、なんで見せるんだよッ!」


駿は即座に顔を真っ赤にしてそっぽを向いてしまった。


「ちゃんと見て決めてくれよ、今着けてるのと両手に持ってるやつ、どれが好みだ?決めてくれないとこのままだぞー」

「何で俺が決めるんだよ、お前の好みで良いだろ!」

「駿の為なんだから決めてくれよ」

「彼氏さんの為に選んでいるのですから、このままですと彼女さんはこの格好のままで恥ずかしい思いをしますよ」


店員さんが助け舟を出してくれて、駿も覚悟を決めた様だ。


「いや、彼女じゃ……分かった、ちゃんと見るから、深呼吸だけさせてくれ」

「よし来い!」


すーはー、と駿は深呼吸して、ヨシ!とコチラを見た。


「俺の好みで良いんだな?」

「ああ、好きなの決めてくれ」


自分が実際に着けてるやつの横に両手それぞれに一つずつ持っている。

駿が真剣な眼差しでブラを見比べている。

今更ながら着けてるやつを見られると恥ずかしくなってきた、駿〜早く決めてくれ〜。


駿はやっと決めた様な顔をした。


「よし、コレだ!」


そう言って俺が今着けてるブラを勢い良く指差し、その勢いのままぷよんと押し込んできた。


「んッ!!!」

「──あっ!スマン!思わず!」


直ぐに指を離してくれたけど、俺はその場にしゃがみ込んでしまった。


「……バカ、気を付けろよな」

「ごめん、集中してて実際に着けてるのを忘れてた」


店員さんも少し苦笑していた。

ちょっと調子に乗りすぎたかも知れない。

カーテンを閉めて服を着直してから、他のブラとパンツを更衣室外で幾つか選ばせて購入した。


駿が当然の疑問を言ってきた。


「なあ、普通に買えるなら俺があの場で選ぶ意味あったか?」

「無いな、ちょっと揶揄って見ただけ」

「お前な〜、めっちゃ恥ずかしかったんだぞ、しかも家族以外の女性の下着姿とか初めて見たっていうのに、相手が睦巳とか」

「なんだよ、こんな美少女の下着姿を見られたんだから感謝してもいいんじゃないか?俺だって恥ずかしかったし、特に胸辺りをジロジロ見られた時にはな、しかも触られたし」

「いやそりゃごめんて、でもさっきは胸の谷間押し付けてきたりしてたじゃん。

それに睦巳があんな事しなけりゃお互い恥ずかしくなかったし、触られもしなかっただろ」

「いやいや服越しと下着の上から指で触られるのじゃ違うだろ。

まあ流石にちょっとやりすぎたなと反省してる、次からは覚悟してからやるよ」

「何だよ覚悟してからって、やんなくて良いから」


「あんたら本当に目を離すとイチャイチャしかしないね、少しは自重しなさいよ」


和香さんにも怒られてしまった、ちょっとやりすぎたな。

でも駿と絡むの楽しいからなあ、やっぱ親友って気心が知れてるから良いな。


そんな事を思いつつ、次は女性服売場に着いた。


当然ここでも駿の好みな服を探すのだけど、ここなら駿と一緒に探せるかな。


「可愛いとセクシーの両立だとやっぱり下はスカートだよなあ」

「まあそうだな、膝上丈な」

「別に膝下でも良くない?」

「俺はさ、やっぱり太もも見たいんだよ、分かるだろ?」


いや分かるけどさ、俺も男だったし、でも実際に履く身だとなあ、今からの暑い時期ならまだ良いけど。


「別に睦巳が無理に履かなくて良いんだぞ、男なんだから無理すんなよ」


む、そんな事言われたら履かないと負けっぽく無いか?

それに俺も今は女の子だからな、履けるとも、履こうじゃあないか。


「よし!じゃあこのミニスカートと膝上丈のワンピースを買う。家にも幾つかあるしこれで足りるだろ」

「おー、良いね、でも本当に大丈夫か?無理してないか」


こんな感じで上着も買った。

駿は肩出しや谷間出しなんかの露出多いのを好んでいた、男の子だねえ。

こんなの誰が着てあげると思うのか、しかし優しい俺は出来るだけ希望を叶えてあげるんだけどね。

駿の喜ぶ顔が見たいんだ。


ひと段落着く頃にはお昼過ぎになりそうだった。


「そろそろお昼ご飯にしようか、そこの洋食屋でいい?」

「はい、大丈夫です」


駿は俺と和香さんが買った衣類の袋を抱えていた。

少しの待ち時間の後、席に案内された。


「うーん、睦巳ちゃんは向かい合うのと隣に座るの、どっちが良い?」

「そうですね……」


駿を見て考える、食事だとやっぱり向かい合ってが良いかなあ。

駿は見られた事に気付いたけど特に何も言わなかった。


「向かい合うほうが良いですね」

「分かった、じゃあ睦巳ちゃんが窓側座って、そんでその奥隣に荷物置いてね。

で、私と駿太朗はこっちで並んで座ろうか」

「じゃあ睦、荷物そっち置いてくれ」

「おっけー」


和香さんは凄く俺に気を使ってくれているみたいで、出来るだけ2人になりやすいようにしてくれる。

前からこんな風だったかなあ、やっぱり俺が女の子になったからその影響なんだろうか。


この洋食屋はハンバーグとエビフライの定食がボリューム満点で美味しいんだ。

いつもの調子でそれを頼んで、駿は唐揚げ定食、和香さんはオムライス定食を頼んでいた。


「食べ終わったら少し休んで次は水着選びだからね」

「え?まだ買うの」

「そうよ、むしろ今日の本命はそっちだからね、あんたもどんなのを着て欲しいかちゃんと睦巳ちゃんに伝えておくのよ、まあ着てもらえるかは分かんないけど」

「駿、どんなのが良い?あ、紐みたいな水着はダメだからね」

「実際に見てみないと分かんないけどやっぱビキニタイプが良いかな」

「まあそう言うと思ったけどさ、私も実際に見ないとなんともだな」


3人で話をしていたら料理が届いて3人の前に並んだ。

うん、やっぱり中々のボリュームだ。いただきます。

まずはエビフライを1尾、うーんぷりぷりしてておいしい。

次はハンバーグを食べますかね~と食べ進めていたら途中で異変に気付いた。


「駿~」

「ん?どうした?」

「なんかもうお腹一杯になったんだけど……」


そう、まだハンバーグが少し残っているけどお腹一杯になってしまったのだ。

女の子になって身体が小さくなった事で胃袋まで小さくなっていたのを忘れていた。

残すのもなんだか気が引けて、どうしたものか。


「しょうがないな、残りは俺が食べてやるよ、女の子だからな」

「え?いいの?食べかけだけど」

「嫌なら止めるけど。今までそんな事気にした事無かっただろ、今更だよ」

「いやそうじゃなくて……」


間接キスなんだけど、気にしてるのは俺だけかあ、まあ良いけどさあ。

男時代の残りを食べるのとはわけが違うと思うのは変なのかな。

例えばさ、俺が男で駿とのキスと、今の女で駿とのキスだと相手が同じ俺でも全然違うと思うんだけど、そういう事なんだけど。


駿は気にしていない風に俺の食べかけハンバーグもエビフライもペロリと食べきった。

うーん、頼りになるなあ。

それはそれとして気にならないっていうのは、……うーん寂しいというかなんというか。どういう感情なんだろう。なんだかモヤモヤする。


「駿太朗、あんた意外と無神経というか図太いというか、ね」

「なんだよ、こういう事は前からあったよ、同じだよ同じ」


「よし、ごちそうさま!」

「じゃあそろそろ水着買う前にブラブラしてから行こうか」

「はい、行きましょう」


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