ゴミ拾いから始まる最強ー収集が覚醒したら分別?ー

あに

覚醒

第1話 命懸けの覚醒


ダンジョンのある世界、夢みたいだけどこれが現実だ。みんながダンジョンに魅了され、スキルを自在に操りモンスターを蹴散らしている。

 

 そんな中俺は、


「オーケイです!」

「おう。今日もゴクローさん!」

「ほんとレクトさんのスキルのおかげで助かってますよ」

「そんなことないですよ」

 ゴミ収集。

 それが俺の仕事だ。

「さぁ、拭き掃除終わったら撤収するぞ!」

「「はーい」」

 夜のアルバイト、パチンコ屋からスーパーまで清掃する作業だ。

「ほれ、お前は休んどけよ」

「あ、ありがとうございます」

 缶コーヒーをくれるこの人は責任者の松崎さん。この人もスキルを持たない。


 スキルは生まれ持ったものである。

 たまに覚醒する人もいるが稀である。

 俺が持ってるスキルは『収集』

 こんなんじゃダンジョン なんか行けない。


「そう落ち込むなよ。ダンジョン 行きたいんだろ?」

「はは、半ば諦めてますけどね」

「スキルがあるだけ良いじゃないか?俺なんかノーマルだぞ?」

 そう、持ってない人が多いから世界は回っている。ダンジョンができてからヒーローのようにスキルが発現してモンスターを倒す人が出てきた。

 だがスキルを持ってないだけの人をノーマルと呼ぶようになったのはいつなんだろう。

 俺も最初はノーマルじゃなくて浮かれてたが、『収集』のスキルはただものを集めるだけしか出来ない。いまじゃゴミ収集だけにしか使ってない。


 なんでこんなスキルなんだろう。

“ゴゴゴゴゴゴ”

「ダンジョン変動だ」

「みんなこっちに集まれ!」

「「はい!」」

“ゴゴゴゴゴゴゴバァ”

 床が抜け、落ちて行く俺たち。


「いてて。大丈夫か?」

「は、はい!」

「いたぁーい!」

「は、挟まってるよ足が!」

 バイトの子の足が瓦礫に埋もれている。

「せーのでいくぞ!」

「「せーの!」」

 なんとか引き出せたが、ただそれだけだ。

「治療パックがここに!」

「よし!使うぞ」

「いたぁ」

 ポーションと言うものだ。高価だが使い所はここだろう。

「ここはダンジョンか?」

「たぶん」

「ノーマルばっかりですよ」

「大丈夫だ、すぐに助けが来る!」

 スマホで緊急ダンジョン警報を押しているからすぐ来てくれるはず。

“カタカタ”

「しっ!」

“カタカタ”

「す、スケルトンだ!!」

「ばか!大声で!」

『収集』

 瓦礫を集めてみんなを隠す。

「レクト!」

「しょうがないでしょ?俺にはこれしかできないですし!」

 自分を隠すなんて出来ないんだから。

 レベル1の俺なんかじゃ倒せないかもしれないけど、俺だって能力者だ!

『収集』

『収集』

『収集』

 こんだけバリケードがあれば、

“ガラガラ”

「くそっ!」

『収集』

「くそっ!これじゃだめなのかよ!」

 瓦礫を積み上げただけのバリケードじゃスケルトンでさえ止められない!せめてスケルトンの核でも、収集できれば違うんだろうけど。

 スケルトンが寄ってくる。

『収集』

 ザクッ!

 スケルトンの持っている剣で足を貫かれた。

「グァァアァア」

「レクト!!」

『収集』

 スケルトンの胸目掛けて収集をすると、核が取れてガラガラとスケルトンが崩れた。

 だがすぐに戻ろうとするので逃げる。足を引きずり痛くても逃げてこの核を壊してやる。

 壁に、瓦礫に打ちつける。が一向に割れない。足に刺さったままの剣を引き抜いてそれで核を叩き潰すとようやくスケルトンの動きが止まった。

「あぁ、よかったあ」

「レクト!まだだ!」

 ザクッ!

「ウガァァァァ」

 今度は右肩を剣で斬られた。

 まだいたのかよ!

『収集』

 狙い通り核を取り出すことに成功した。

 左手に剣を持ち振り上げて下ろす。

 核はパリンと音を立てて崩れた。

「レクト!早くこっちに!」

「は、はい……」

 足に力が入らない。

「あ、はは、」

“カタカタ”

「まだか、もう…これ以上は」

「大丈夫か!」

「もう大丈夫です!」

 上からヒーローが駆けつけてくる。

「怪我人が!」

「ポーションを使います!」

「はい!」

 ここで俺の意識は途絶えた。


「は!」

 ここは?病院か?

「目が覚めたか!良かった!」

 松崎さん。にバイトの女の子も、

「レクトさん!本当にありがとうございます」

「レクトのおかげで俺たちは無事だった」

「ははっ、良かったです」

「無茶するなよ!スケルトンが来た時は肝が冷えた」

「俺もですよ、なんとか倒せましたけど」

「あ、なんか剣は貰っとけって言ってましたよ」

 俺の横にスケルトンの剣がある。

「能力者なら自衛の手段はもっとけってさ」

「能力者って言ってもこんなですけどね」

「あはは、俺らは助けられたさ」

「そうですよ」

 こんな俺でも助けられたんだな。

「かっこよかったぜ?」

「そうですよ!血だらけでスケルトンに立ち向かってて」

 ヒーローからしたらスケルトンなんて直ぐなのにな。俺は命懸けだもんな。

「労災降りるから心配するなよ?」

「本当ですか?良かった」

「そこ心配してたんですか?」

「「あははは」」

 


 それから三日の休みをもらって病院でリハビリをする。もう完璧なんだけどな。

「レクト君は能力者だから回復が早いね」

「使えない能力ですけどね」

「ノーマルの俺にとっては羨ましい限りだよ」

「そんなことないですよ、ほんと使えないんで」

「どんな能力でも使い方次第じゃないかな?実際助けたんだろ?」

「なんとか、無我夢中でしたけどね」

「なら君はその人達にとってヒーローだよ」

「そんな偉そうなこと言えないですよ」

「あはは、はい、つぎは歩行訓練」

「はい」

 歩行も難なく、リハビリは今日で終わり。


 アパートに帰りテレビをつける。あのスーパーはダンジョンに認定されたみたいだな。

 俺は布に巻かれた剣を見る。

 明日からこれも持ってかないといけないのか。

「せっかくもらったんだ、少しでも使えるようにならないとな」

 ちかくの公園で素振りをする。これなら一層のスライムなら倒せるだろう。

 近くのダンジョンにいくために自転車に乗っていく。


 初級ダンジョンだ。三層しかないから誰も来ていない。

 ダンジョンの門の前の支柱に手をかざす。

 能力者だと門が開くようになっている。

「よし、スライムを斬って倒して行くぞ!」

 中に入るとスライムがまばらにいる。

「よし、『収集』」

 スライムの山ができた。

「うおっ!うおぉぉ!」

 少し焦ったがスライムを倒して行く。

「え?」

 金のスライムがいた!

「ウオォ!」

 斬ると煙になってカードが落ちている。

 まだスライムはいるのでまた後で確認だ。

 なんとかスライムを片付けてドロップ品を、バックに詰めて行く。あ、カードが出たんだった。

「あ、アイテムボックス?!」

 超高級カードじゃないか!これはやばい!

ポケットのなかに大事にしまうとギルドに向かう。

 ギルドビルに足を運び、ドロップ品を買い取って貰う。

「全部スライムですね。少々お待ち下さい」

 それ以上にポケットのカードにドキドキしている。

「三万七千円になります」

「はい、ありがとうございました」

 俺の日給の四倍だ。

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