人類幸福ダイエット法

第1話

　未来、とある画期的なダイエット法が考案された。確かにその方法で痩せたものもいたのだが、これはその後、大きな禍根を残したのだった。

　そのダイエット法とは“幸福になること”。怪しい宗教ではない。ある肥満の人々を施設にあつめ、組み合わせ、“パートナー”を組んでもらう。お互いを尊重しあい、みつけたいいそのパートナーとともに“ダイエットパートナー”の契約を結ぶ。そのパートナーと、趣味を共有しあい、一緒にダイエットをし。場合によっては愛し合うのだ。その様子を中継するので、これにはほとんど無償で参加できた。いわばリアリティショーである。

　この考案者はいう。

「ダイエットとは辛く苦しいものというイメージがある、ですが太っているひとのほとんどはストレスによるものだという意見もある、体質の問題はあるが、このダイエット法に参加する参加者はストレスによるものが多い、そう、だからまずはストレスを緩和するのです、パートナーは恋人であれ友人であれかまわない、まずは“同じ状況”のひとと苦難をともにし、ほめあうことが重要です」

　が、この考案者はほどなく逮捕された。それは“監禁”“詐欺”の容疑でだ。このダイエット法は、広告とは違い、人々をバーチャルリアルのメタバースに閉じ込めて行われたものだった。参加者は男性ばかりであり、この“パートナー”もほとんどがＡＩを用いて人によって自動生成したものであり、これらは当事者たちに知らされずに行われたのだ。当事者は、その“ダイエット施設”に集まったあと眠らされ、強制的にメタバースに接続された。そして、計１８０日とじこめて、栄養は点滴等で供給した。

　やがて数々の罪で逮捕されたこの考案者は、今回の“実験”について獄中でこう語った。

「ダイエットと同時に幸福を手に入れられるなんて幻想だとしらしめたかった、俺は、もともと太っていて苦労をしてやせたというのに」