初恋

えいみ

柴田辰巳

第1話

眠い。布団で寝たい。


柴田しばたくん、ノート回収するよ」


「あ、はい」


委員長は誰にでも声かけをしてる。働き者だ。だけど、その友達というのが…稲賀いながさんである。

友人から聞いた話によれば、成績トップで入学。それから、年上とよくデートしてるらしい。


「また寝てたわけ?」


友人は、なにげに優しい。


「んー、眠くてさ」


「はぁー、寝なければ成績伸びるのに…もったいないな」


「成績とか普通でいいんだけど」


「トップ狙えばいいのに。お前ならあの稲賀さんを抜けそうだけど?」


ま、そーなんだよね。入学してから何回か試験はあったけど、稲賀さんは成績落ちたっぽい。


「トップとかどうでもいいんだけど」


「期末はテスト範囲多いし無理だけど、2学期の実力とかなら抜けるんじゃない?」


「俺、夏休みはそんな勉強しない気がする」


「塾行けばいいのに」


ほら、また塾。友人の金井かねいは塾大好き人間。


「宿題が多いらしーのによくやるよ。無理無理」


「いいよな、親に塾行けって言われなくて」


「まーね」


塾には行かないし、部活もしていない。

おばあちゃんの家に行ったり、ボランティアしたり、家の仕事をしている。俺にとってそれが日常。


「あれ?辰巳たつみ起きてたのー?」


「おかえり」


夜中にぼーっとリビングで飲み物を飲んでいたところ、母帰宅。


「ただいま~。お仕事してたの?」


「いや、飲み物飲んでた」


「そっか~」


母は女優。忙しそうなのに、俺たちに構ってくれる。


「ねぇ辰巳。いつもおばあちゃんのところ行ってくれてありがとう。おばあちゃん嬉しいって!」


「ただいるだけだよ」


「辰巳いい子だねー」


座ってたから頭をなでられた。ドラマとかでは見せない優しい顔をしている。たまに、辰巳はかわいい女の子に見えてくると言われる。それはきっと母のことだ。


「俺、夏休みに泊まりのボランティア行くから」


「そーなの?亮伍りょうごくんのママが教えてくれたの?」


「そうおばちゃん。子供と泊まるやつ」


おばちゃんは近所に住んでいる。ボランティアの仕事をしているから、よく誘われる。


「楽しそーだね!ママも行きたいなぁ」


「だめだよ。それ英語喋れる人限定だからー」


「えー!そうなの?じゃあだめだ~。辰巳よかったね~」


「去年も行ったし、楽しみ」


「そっかぁ~楽しそ-」

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