【検証】この世はクソつまらんから異世界転生したかった俺、やっぱり異世界転生は無理だと気付いてしまったので現代のダンジョンで無双してみる事にしてみた~バズるとかどうでもいいのに勝手にバズってました~

新条優里

第1話異世界転生を諦めた男、現代ダンジョンへの挑戦を決める

 この物語はフィクションであり、実在の人物や団体とは関係ありません。

 時代、法律、文化など現代の日本と多々相違することがあるかもしれませんが

 ご理解下さい。

 そして、特に、主人公のアホさと非常識さは、実在の人物や団体とは関係ありませんので、その点もご理解下さるとありがたいです。



 


 俺、天美龍二の願いは異世界転生することだった。

 この世は退屈なことばかり。

 剣や魔法の世界で無双することを夢想する日々である。


 異世界転生モノのパターンとして居眠り運転トラックに轢かれるというのがある。

 俺はわざとトラックに轢かれようかと一瞬頭に過ったが、運転手や周りの人に迷惑を掛けてしまうので、その案は却下する。


 だが、その願いは思わぬ形で叶えられ、下校途中に居眠り運転トラックに轢かれてしまう。

 異世界転生か異世界転移できるものと思っていたが、俺が目を覚ましたのは病院のベッドの上だった。


 ただ怪我をしただけで異世界転生できなかった。

 しかも軽傷だった。

 何故俺が軽傷で済んだかと言うと、俺の日課は筋トレで、毎日腕立て1億回、腹筋1億回、スクワット1億回した所為で鍛えられ過ぎたからだ。


 異世界転生した時に無双する為に、鍛え過ぎたのが良くなかったのか……? 学校より退屈な病院のベッドの上で過ごすことになった。


 軽傷で済んだので、直ぐに退院出来ると思ったが、医師からは『大型トラックに轢かれたのに軽傷だと……信じられん……念のために暫くは入院してもらうよ』と言われてしまった。


 入院中は看護師から、


『キャー! カッコイイ! 筋肉触らせてー!』

『龍二君、芸能人にならないの? こんなにかっこいいのに』

『家で飼いたい! 私のペットになって!』

『退院したら一緒にご飯行きましょうね、絶対ですよ!』


 とか言われたけど、俺はこの世の女性に興味がない。

 かといって、同性愛者という意味ではない。

 俺も年頃の男性だ。女性には興味がある。


 俺の恋愛対象は、エルフとか、犬とか兎の亜人であって、普通の女性には興味はない。

 ハーレム展開出来るならそっちの方が良いと思う。


 剣や魔法の世界で無双して、亜人にモテまくる。

 そんなささやかな俺の希望も叶えられない日々だ。


 もう一つの異世界に行くパターンとして異世界人から召喚されるというものがある。

 異世界の危機を救う為に、平凡な少年が召喚され、ゴミ職業とかの役割を与えられるが、実はチート能力で、無双し、ハーレム展開が待っているというものだ。


 だが、こちらの方が、居眠り運転トラックに轢かれて異世界に行ける確率は低いと思う。

 確率は低いとはいえ、居眠り運転トラックに轢かれることはあると思う。

 だが、異世界人に召喚されるなんて、現実世界で聞いたことはない。


 そんな奇跡的なことが俺の身に起こった。

 異世界人が魔王軍の脅威から俺を召喚することになった。

 俺はこちらの世界と異世界の中間地点である不安定な空間までは行けた。


 だが、別で召喚されたこちらの世界の人間が秒で魔王を討伐し、異世界に平和が訪れた。

 異世界人は『あー、もうコイツいらんわー』って言い放ち、俺はこちらの世界と異世界の中間地点である不安定な空間から強制送還された。


 要は俺はスペアだったのだ。

 恐らく異世界人達は、何人かの人間を異世界召喚し、その中の一人が秒で魔王を倒した。

 それで俺がいらなくなった。


 不安定な空間にいた俺の体はグニャグニャな状態で、病院のベッドの上に強制送還された。

 突然姿が消えた俺が再び突然姿を表したものだから、看護師たちが『キャー!』と騒ぎ出した。


 医師は『固体と気体の中間の不安定な状態になっている……これは研究所に連絡……い、いや、入院期間を伸ばさなくては』と、俺を研究所でモルモットにする計画元い、入院の延長を告げられた。


 更に退屈な日々が続く事になってしまった。

 医師からは過激な運動は控えるように言われていたが、日課の筋トレは続けたかったので、看護師達に隠れてやることにした。


 腕立て1億回、腹筋1億回、スクワット1億回など秒で出来るので、看護師達の目を盗んでやることなど造作もなかった。

 俺の兄貴は各100億回ずつ出来るので、負けるわけにはいかないと闘志をみなぎらせるのだった。


 ただ、そんな変化のない日々を送っているうちに俺の心は折れそうだった。


「もう異世界には行けないのかな……」


 ポツリと弱音を吐いてしまう。





 ある日テレビを見ていた。

 ニュースキャスターの口から信じられない言葉が発せられた。


『緊急です。世界中で迷宮が出現しました。各地で大規模の地震、津波、台風が発生した後、迷宮が出現しました。加工映像ではないのかと、当社のスタッフも現地に行きましたが、実際に存在しました。皆さん、これはドッキリではありません。信じられないかもしれませんが事実なのです……洞窟、塔、海底迷宮、天空に浮かぶ城です』


 一瞬何を言っているのか分からなかった。

 看護師達も、タチの悪いバラエティー番組だと認識しているようで、検温だったり、患者の容体の聞き取りをしている。


 だがそれから数日すると、それが悪質なドッキリではない事が世界中で認識されることになる。

 現地に行ったマスコミや、興味本位の一般人が中に入り込み命を落とした。


 録画だったら加工したフェイク映像と言えたかもしれないが、それらは生配信だった。

 生配信でテレビスタッフ達がモンスターに虐殺される様子が映し出されてしまった。

 その迫力は、とても作り物ではないと皆が認識してしまった。


 入り込んでしまった一般人は無名の配信者だった。

 いつもは退屈な企画や雑談をするだけだったが、チャンスとばかりにダンジョンに入り込んだ。


 生配信は一気に注目を集め、切り抜きも何百万回と回ったが、彼は命を落とした。

 一瞬だけ有名人になれた。

 だが、その代償は大きすぎた。


 その映像を見た俺の感想としては悲しい、苦しいというものだった。

 いくら毎日が退屈過ぎると感じながら過ごしている俺としても気持ちの良いものではなかった。


 退屈は嫌だけれど、だからと言ってこんな残酷な場面も見たくないと思った。

 マスコミの人達は、どうせタチの悪い悪戯だけど上司の命令で行くしかないという状況だったのだろう。

 テレビを見ていた遺族もやり切れないだろう。


 無名配信者の人も、只有名になりたい一心でダンジョンに入り込んだのだろう。

 勿論、普通に配信活動をして人気が出れば良かったのだろうが、皆実力があるわけではない。

 藁にも縋る思いでダンジョンに入り込み、未知の生物であるモンスターに殺された。


 モンスターとしても悪気があるわけでもなかったのだろう。

 ダンジョン内で、急に目の前に姿を現した人間。

 身を守るために人間を襲ったのかもしれない。

 或いは、本当に凶暴で喜んで人間を襲った可能性もあるが。


 そんなぐちゃぐちゃな俺の頭にある思いが過った。

 異世界みたいだった。

 人間が虐殺される光景は、ファンタジー世界の夢のある話でななかった。


 でも、モンスターはいる。

 あいつらで力試ししたい。


 勿論、命を落としてしまった人達がいるので、不謹慎な気持ちかもしれない。

 彼らの事は可哀想だと思う。

 でも他人には理解されない子供の頃からの夢が叶うかもしれないと思うのだった。

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