"癒し"系VTuber・蛇王ルキ

第51話 チ◯◯なんかに絶対負けたりしません!!!



 ──その女は、オアシスを治める巨大企業の社長を務める「蛇女エキドナ」だ。


 平均同時接続者数、25,000名。

 チャンネル登録者数、752,912名。


 香りで惑わし色で魅せ、身と舌とで絡めて堕とす。

 蛟竜毒蛇こうりょうどくだ奸計かんけい手繰たぐり、花天酒地かてんしゅちの闇に巣食う魔性。


 オーロラ・プロダクションの序列二位ナンバー・ツー


 強襲せし新たなる来訪者。

 ”癒し”系VTuber「蛇王じゃおうルキ」。





「あーん佐々木っちぃ! 会いたかったぁーんっ!♡」


「ルキぃぃいいい! なんで、ここにいるのおおっ!?」


 高山愛里朱のスタジオの玄関だった。

 突如として押しかけてきた蛇王ルキ(の中の人)に押し倒されたまま俺は絶叫する。

 跨ってくるルキをなんとか退かしたいところだが、露出の激しい彼女をどかすには地肌に触らざるを得ず、「いや……元プロデューサーとしてそれはどうなのよ……」なので、俺は文字通り手も足もでない。

 くそ、できる限り手を遠ざけるしか……っ……!


「あんっ……♡ ダメだよ佐々木っちぃ……、そんなトコ……触っちゃ、やぁ……っ……♡」


「だから触ってないでしょうがっ! いかがわしい声を出すなっ!!」


「えへへ! 佐々木まねーじゃーぁ! じぶんを無視しないでくらさいよーぉ!」


「チサトのそのノリはなんなのっ!? キャラ変したのっ!? ていうか酒臭っ! なんでえっ!?」


 蛇王ルキがまさに蛇よろしくペロリと唇を舐めて笑った。

「チサっちがお酒臭いのはぁ……ルキ社長がいっぱい飲ませちゃったから、だよ?♡」





 ──時は3時間前。

 獅紀チサトの配信『酔ったら即終了! 成人記念ほろ酔い配信です!【ルキ殿コラボ】』でのことだ。


「敬礼ッ! こんばんは、獅紀しき神兵団しんぺいだんの皆さま! 自分は兵長の獅紀チサトです!」

 ブルーのショートへア。少年のようにキリッとした表情の獅紀チサトが、びしりと敬礼モーションをきめた。


【敬礼!(>ロ<)ゝ】

【けいれー!】

【お疲れ様ですへいちょー!(>ロ<)ゝ】

【兵長かわいいよ兵長(>ロ<)ゝ】


「先日の誕生日配信では多くのご祝辞をありがとうございましたっ! 本日の配信は『獅紀チサト成人記念』と題しまして、特別ゲストに来て頂いてます! どうぞっ!」


どーもーサ・アイ・ヘ・セス! 獅紀神兵さんたち♡ オーロラ・プロダクション2期生、エキドナコーポレーション社長の蛇王ルキでーす♡」


【サ・アイ・へ・セス! ~>゜)~~~】

【お疲れ様ですしゃちょー!(>ロ<)ゝ】

【蛇社員さんたちもこんばんはー!(>ロ<)ゝ】

【けいれいニョロ〜 ~>゜)~~~】


「わあ、コメントにも活気がありますね! 今日はよくいらっしゃいましたルキ殿──って、ひゃわあっ!?」


「ぷふふー♡ かわいい後輩のためならどこまででもイっちゃう次第でーすっ♡ ……ねぇねぇ……神兵団さんたちぃ……? 生チサトちゃん……めちゃめちゃしっとりで……触り心地いいよー……?♡」


【へ、へいちょおおお!?(>ロ<)ゝ】

【ああ……やってんな…… ~>゜)~~~】

【すいません弊社の社長が……】

【殴っていいニョロので……】


「ちょ、お、おやめくださいルキ殿……っ!? スキンシップはほどほどに……! 今回の目的は別にありますよねっ!?」


「はーい! そうなんですよー! ルキ社長ねぇ……チサっちがオトナの階段登ったって聞いてからぁ……どうしてもハジメテをご馳走になりたいと思ってたんですぅー……♡」


【逃げなきゃ(迫真)】

【へ、へいちょおおお!?(>ロ<)ゝ】

【流れ変わったな?】

【すんませんウチの社長が……】


「な、なんだか表現がいかがわしいです……! ええいっ、自分が言わせていただきます! 今回の配信のテーマはズバリ、『飲酒』です!」


「ぷふふ、そおでしたー! チサトちゃん興味あるんだもんね?♡」


「はい! 二十歳になったら飲んでみたいと思っていました!」


「っ!? あ、はは……チサっちチサっち違うでしょ……? 獅紀チサトちゃんは200才のマンティコアなんじゃないっけ……?」


「えっ、あっ、あっ! 失礼しました! そうです!! 今年で200歳でした!!」


【ゼロひとつの間違いよくありますよね!(>ロ<)ゝ】

【自分もよく2歳って言っちゃいます(>ロ<)ゝ】

【なんかコメ欄がほのぼのだニョロな……? ~>゜)~~~】

【やさしいせかい】

【やさいせいかつ】


「……というわけでぇ♡ 今日は飲酒処女なチサトちゃんに合わせて6つのレベルでお酒ぽしゃけを用意しましたぁーん!」


  レベル5 スピリタス

  レベル4 ストゼロ

  レベル3 ワイン

  レベル2 酎ハイ

  レベル1 ビール

  レベル0 ボンボンショコラ


【ストゼロきたああああああああああああ】

【お ま た せ】

【応援しています兵長(>ロ<)ゝ】

【乾杯であります(>ロ<)ゝ】

【うわばみ…… ~>゜)~~~】

【うわばみ注意……】


「それじゃーぁー……最初は優しくウイスキー入りのボンボンショコラで乾杯しちゃおっか♡」


「おお、チョコレートですね! 未成年でも食べれるお菓子じゃないですか! いただきますっ!」


「ぷふふ! さすがに簡単すぎたかなぁ……?」


「はむっ……当然です! こんなものいくらやっても無駄です! 自分は獅紀神兵団の兵長!! チョコなんかに絶対負けたりしません!!! ふにゃああ…………」




──────────────────────




 今回もお読みいただきありがとうございます。


 新編始まりました!

 どうぞよろしくお願いいたします!

 お菓子の名前が先頭にくると飯テロになってよくないな、と思ったのでタイトルは伏せ字にしました。気遣いのできる作者です。


 執筆の励みになりますので、

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