第2話 俺のライフはもうゼロ。そして怒りのボルテージが少し上がった
「............あーぁ、せっかく
......なに? どういうこと?
身体の相性って......浮気してた......? いや、向こうと婚約済みなら俺が浮気相手になるのか? もう意味わからんのだが。
「せめて夜のテクだけでも上手ならまだしも、アレだって彼のほうが大きいし、穿り方だって創より彼の方がずっと上手いんだから。どのスペックとってみても希新さんの方が上なんだから、そりゃもう乗り換えるしかないじゃん?」
............。
「今までは付き合ってたから仕方なく気持ちいいフリしてあげてたけどさ、はっきり言って全然気持ちよくなかったんだよ。演技してただけ。別れるんだし、最後のプライドくらいは守ってあげようかなって思ってたのにさ。しつこい創が悪いんだよ」
「あ......そう、なんだ......」
いろいろ思うところはあるけど......。『演技してただけ』。その可能性はあるなってずっと思ってた。
俺が大学1回生のときに当時4回生だった妃涼さんとサークルで知り合って付き合いだしたわけだけど、行為に関して、俺は初めてで妃涼さんはそうじゃなかった。
高校時代の彼氏に捧げてたらしい。
まぁきれいな人だからそれは仕方ないし、むしろ20代も中盤になって未経験ってことの方が不自然だし、責めたりするようなことであるはずもない。
だけど、初体験の俺と経験済みの彼女では、うまくできないせいで愛想を尽かされるかもしれないっていう恐怖はずっとあった。
行為のときに女性が演技をしているかどうかを見分けるのは難しいらしい。
汗をかいてるとか体温があがってるとかナカの感触や動きとか、いろいろと演技かどうかを看破するための観点を調べたりして、演技じゃなさそうだって、ちょっと安心してたんだけど。
それでも、いつも上手に演技してくれてるだけなんじゃないかって疑心暗鬼になってる自分は確かにいた。
どうやらその答え合わせを、今、されたらしい。
なんかのアンケートで見たことある。世の中のほとんどの女性が、行為のときに演技している、と。
俺はそれには当てはまらないって信じようとしてたけど、ダメだったらしい。俺も、そこらの凡夫と同じ、いや多分それ以下の男だったらしい。
妃涼さんは、『いつも気持ちよくなかった』、『下手だった』と、今言う必要もないことを、俺を傷つけるためだけにわざわざ伝えてきてる。
たちの悪いドッキリじゃないか、とも考えたけど、俺の知ってる妃涼さんは相手を傷つける冗談が一番嫌いなはずだから、ドッキリじゃなさそう。
いや、今となっては俺が知ってた妃涼さん像が正しいのかすらわからなくなってきてるけども。
だけど......それでもまだ信じられないし信じたくない。妃涼さんが俺にこんなにひどいことを言うなんて。
そもそも
やっぱりなんか事情があって俺に嘘ついてるとかなんじゃ......。
「......あー、なんか腑に落ちてなさそうな顔してるね。もしかして私がエッチに積極的じゃなかったのに、それで乗り換えるのはおかしいとか思ってる? ......あー、その顔図星っぽいね、気持ち悪いよ」
夜の上手さを理由に男を乗り換えるようなことをするのか? っていう俺の心の中の疑問を読んだように、辛辣な口撃が続く。
「本当に私の性欲が少ないからだと思ってたの? 違うよ。創がヘタクソで気持ちよくないどころか痛くて気持ち悪いだけだったから、適当な理由をつけて避けてただけよ。ま、創は私とスるまで童貞だったわけだし、形の相性とかあるっていうし、しょうがないか。今後他の子と付き合うときは相性がいいとイイね」
これは一体ダレなんだ? 何を言われてる?
びっくりするぐらい頭が回らない。っていうか回したくない。理解したくない。
意味が頭の中に入ってこないけど、それでも自分が罵倒されていて、妃涼さんから拒絶されてることだけはわかっているからか、急激に体温が下がって、手が震えてるのがわかる。
呼吸が浅く早くなって、心臓がうるさいくらいに鳴っている。同時に、俺の中にあった愛情も、清廉潔白な妃涼さんのイメージも、すごい勢いで崩れていく音がする。
それから、彼女の最後の一言、『今後他の子と付き合うときは相性がいいとイイね』って言った。暗に彼女と俺に今後がないことを示唆していて、さらにダメージが入る。
「いい加減わかってくれたかな。一緒に逃げるとか、私、そもそもそういうの望んでないんだよね。そんなわけで、創とのお遊びは今日で終わり。今までご苦労様でした。今後は二度と私に近づかないでね。婚約者に元カレと会ってるとか誤解されて捨てられたら嫌だし」
俺の心のライフはもうゼロだ。
そして、怒りのボルテージが少し上がった。
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