君と幸せになりたかった。君には幸せになってほしかった。
赤茄子橄
第1話 捨てられ
※めちゃくちゃシンプルにバッドエンドです。一切、なんの救いもなく、誰も幸せになりません。ざまぁも、復讐も、何もなく、スッキリする可能性はゼロです。罪のない主人公たちが理不尽に絶望させられ、悪役は裁かれない、そんな話です。そういうの、ムリな人は、自衛のほどよろしくお願いします。
*****
「
「うん」
否定、してほしかった。
俺のおずおずとした質問に対して彼女から返ってきたのは『当たり前でしょ?』とでも言わんばかりの淡白な返事。
せめて目線を下に落としたり、キョロキョロと不審な動きをしてくれれば、彼女にとって不本意で、暗に俺に助けを求めてるんじゃないかって、勘違いすることだってできたかもしれない。
彼女のためならって、なんとかしようと動き出したりできたかもしれない。
だけど、彼女は真顔でまっすぐ俺の目を見てる。
彼女が変わらない意思決定をしたときの仕草。
もう俺との未来よりも、その
「なんでだよ......。妃涼さんの家のことはなんとかなるって......俺たち2人でなんとかしようって話してたじゃないか! なのに............何で!!!!」
「それは............」
さっきまでとは違って、今度は視線を逸して少し口ごもる妃涼さん。
俺との約束を破って他の男と一緒になることを決めたことに、申し訳なさを感じているのか、どんな言葉を選ぶかを考えて迷ってるのか、それとも後ろめたいことがあるのか。
「俺は納得しないよ! 妃涼さんがその人と一緒になることを望んでるならともかく......。どうせ実家から強制されてるとかでしょ!? そういうときは俺にも相談してくれっていつも言ってるじゃないか!」
「..................」
「なぁ、なんか言ってくれよ! なんなら一緒に逃げたっていい。どっか人に見つからない山の中にでも逃げてさ、自給自足とかしてもいい。
「..................」
俺の言葉に何も返さないまま、鎮痛な面持ちを浮かべるだけの妃涼さんに、さらに苛立ちが募る。
「なんでなんも言わないんだよ! 俺、そんなに頼りない? 確かに妃涼さんもその木用さんももう社会人なのに俺はまだ1年くらいは学生だもんね......。でもさ、俺、妃涼さんを幸せにできるようにがんばるからさ......。だから、俺に相談してよ......」
苛立ちに任せて語気強く責め立てだしたはいいけど、普段から妃涼さんに強い言葉を使ってこなかったからか、俺の勢いは後半になるほど弱くなって、最後は祈るようなお願いになってた。
この振る舞い自体が、現在進行系で情けなくて、頼りにならないと思われる要因かもしれない......。
でもいきなりこんな展開になったら誰だってこんな感じになるだろ!?
理不尽にも権力や将来を傘に、不本意な婚約に同意させられそうになってる恋人から唐突に別れを告げられたら、誰でもこうなるだろっ!?
はぁ〜〜〜〜〜。
「......え?」
一瞬、なにが起きたのかわからなかったが、どうやら妃涼さんが深い溜め息をついたらしい。
これまで聞いたこと無いくらい低く、機嫌の悪そうな大きいため息。
面倒くさいとか鬱陶しいって気持ちがこもってるように聞こえるため息。
妃涼さんはそういう不機嫌さを滅多に表に出さない人だし、まして俺にそれを向けてきたことがなかったからこそ、驚きが凄い。
まるで目の前にいるのが妃涼さんではないんじゃないかと錯覚してしまいそうなほど、見たこと無い空気を纏っている。
その姿に声を出せないで固まっていると、気怠げな目線をこちらに寄越して、ようやく妃涼さんが重い口を開いた。
「はぁ、わからないかな。
「っ!?」
脳の処理が追いつかない。
眼の前で言葉を紡いでるのは本当に妃涼さんなのか......?
俺よりイイ男......。そりゃあそんなの星の数ほどいるかもしれないけど、これまで2人で積み上げてきた時間は、そんなステータスに簡単に崩されるものなのか?
彼女は今年25歳になる。相手の人は妃涼さんより上らしいから社会人として多少のポジションにはいるのかもしれないけど。
あと、年上好きとか......。これまで『年下の方が可愛がれるから好きだな』って言ってくれてたのは嘘だったのか。
あるいは働きだしてから嗜好が変わったとか。普通に有り得る話ではあるけど......。
だけど、それでも。
「い、今はその
「............あーぁ、せっかく創のしょぼいプライドを守るためにわざわざ言わないであげたんだけどな。こうもしつこくされたらウザいったらないよ。身体の相性だって、創よりも、希新さんの方が......いいし」
....................................はぁ?
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