Roaring 41. ラブクラフト無双



「ああ、ギャツビー様……。好き……食べちゃいたい……でも、ダメよ、クレア・ウルフシャイム! 我慢しなくちゃ! 私はギャツビー様の忠実なしもべなのですから……でも、ああ、こんな近くでお顔を拝見するなんて……」

「…………。……なにしてんの?」


 胡坐を組んだラブクラフトはパチっと目を開け、その胡坐の上に乗るように抱き着き、唇を尖らせている秘書を十センチの至近距離からまじまじと見つめた。

 ギャツビーの問いに、クレアは傘を差したまま立ち上がって、スカートの裾を軽く払う。


「なんでもありません。お身体が雨に濡れないようにしていただけです」

「いや、だとしても近すぎでしょ」

「必要と判断したまでです」

「そうかい? ならいいや」


 ギャツビーはグッと伸びをして立ち上がると、未だに沈黙している隣の死体を見つめた。

 今やダーティの身体は熱を帯びて真っ赤になっていた。降り注ぐ雨粒が一瞬にして蒸発して、周囲にはもうもうと白い蒸気が立ち昇っている。復活の時は近かった。


「……早くいかないと主役を食われちゃうぜ、オールド・スポート」

「ギャツビー様、一体なにをしてきたのですか?」

「んー、そうだな……強いて言うなら、覚醒の手伝いかな? そう、これから始まるのは――ラブクラフト無双だ!」



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