191.猫も同意でテストの日(上)
美緒里が言った。
「月末の
確かに彩ちゃんもパイセンなら『24時間ノンストップ探索』もやり遂げられるだろう。でも、いますぐにではない。それ用の準備を整えてからの話だ。
間引きは月末だけど、それまでにテストに合格すればいいわけではない。間引きは間引きで準備が必要で、期限ぎりぎりの合格では意味がない。
遅くとも、8月第3週――15日くらいまでには合格しておく必要があるだろう。
でも、今日は――既に7月30日。明日から準備を始めるとして、15日までは……15日しかない。
いくらなんでも、時間がなさ過ぎた。
しかし、美織里は言うのだった。
「時間? いくらでもあるじゃない――ここに」
「ここ?」
ああ……そうか。
「
僕らが異世界にいる間、現代日本では時間が経ったない。
「なんなら
と、美織里が笑う。
彩ちゃんとパイセンを見れば、こちらも。
「「(にま~~~)」」
なんとも形容しがたい笑みを浮かべていた。
「異世界ボケしても困るから、こっちで3日でトレーニングしたら日本で1日休むって間隔にして~。まあ、最低でも1ヶ月は稼げるんじゃない? それだけあればなんとかなるでしょ」
異世界ボケというのが何なのか分かるようで分からないのだけど、言いたいことは分かるし反論できそうなところもない。
ただ1つだけ、言っておきたいことがあった。
「
「それはそうね……だが、断る!」
そう言ってドヤ顔する美織里に(きっと元ネタなんて知らないで言ってるんだろうな……)と思いながら、僕は続きを待った。
「慣れてないのは
なるほど……今度こそ反論できなくなった僕に、美織里は再び笑いかけると。
「というわけで、美織里とパイセンはクールに去るぜ!」
と僕を彩ちゃんに押しつけ、パイセンと一緒に部屋を出て行ってしまった。
なお、後でパイセンに聞いたところによると『みおりんには、J○JOとF○Sと諸○大二郎を履修してもらってるから』とのことだった。
そして二人きりになった部屋で、僕と彩ちゃんは、どこかから夜想曲が聞こえてくるような夜を過ごしたのだった。
●
翌朝いったん日本に戻って準備を整え、再び異世界に渡ったのは更に翌日の早朝。
日本の日付でいうと、7月31日だ。
そして予定では、僕が
「え? なんで? 明日やるつもりだったんでしょ? だったら明日やればいいじゃない――
美織里に話したら、そういうことになった。
(まあ、いいんだけどね……)
すると、さんごも。
「まず光が体験して、
はい、そうですね。
というわけで、地元のダンジョン用に考えてたプランをいったん捨てて、
そもそも、どこのダンジョンでやるのかすら、決まってないのだ。
以前潜ったことのあるジョウエンダンジョンがいいかな、と考えたのだけど。
「だめよ。さんごも言ってたでしょ? 彩ちゃんとパイセンのための情報収集が大事なんだから。光も初見のダンジョンに潜らないと、目的の『初見で気を付けなきゃならないこと』が見付からないでしょ?」
はい、そうですね。
「マゼルに聞いたんだけど、ドリンコダンジョンってとこがいいみたい。適度に広くて、階層間の移動もゲートの無い斜面を下ってく形らしいし。フィールドタイプで、地面は草じゃなくて土が露出してるから走りやすい。私的にはアンブッシュへの警戒が必要になる草原の方がテストとしていいんじゃないかと思うんだけど、そこはサービスしとく」
そんな感じの正論尽くめで、僕は明日、ドリンコダンジョンで『24時間ノンストップ探索』に挑戦することになったのだった。
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