75.猫はどこかでお楽しみ
ファストファインダースの3人の見分け方
赤松さん:普通に喋る
ガルシアさん:めっちゃ訛る
山際さん:台詞の真ん中に「……」が入る
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ドイツのレストランの前で会ったのは、ファストファインダースの赤松さん、ガルシアさん、山際さん。
ZZダンジョンで一緒に戦った3人だ。
「君たちの事務所、俺らも世話になるから」
と赤松さんが言う通り、ファストファインダースも美織里の新事務所と契約することになったらしい。
まったくの、初耳だった。
これだけじゃなく、最近、こういう僕だけ知らないことが多い気がする。
でも美織里にこう言われたら、文句は言えない。
「走らせてる案件が多過ぎて、全部は話せないのよ。それでも決まった分から話してるつもりなんだけど……まあ、このザマってわけ」
レストランに入って、みんなで食事をした。
「オ”ッメピカリン、ドイヅノリョウリ”ナンデ、ゾーゼーディト、ギャベヅト、ブダグライジガネ”ッドオボッデンダロ」
「実際……その通りなんだがな」
ガルシアさんと山際さんはそう言うのだけど……確かにソーセージと
6月の終わりが旬の終わりということで、今日ドイツに来た僕はなんとか間に合ったらしい。黄色味がかった白いソースがかかっているけど、これはオランデーズソースといって、乱暴に言うなら油と酢をバターとレモンに置き換えたマヨネーズ。でも風味がマヨネーズと全然違っていて、とても美味しかった。
あらかた皿が揃ったところで、美織里が聞いた。
「で、欧州はどんな感じ?」
「どこに行っても
美織里の事務所に所属することが決まってから、赤松さんたちはヨーロッパ各地のダンジョンに潜って、現地の探索者と交流していたのだという。
「大手の
そんな説明を聞いて、美織里が悪い笑みを浮かべた。
「そこに、我が社が食い込む隙があるってわけよ」
「ドヤッデ? D&Rノドグゼンハエッグイベ。オオグヂノシゴドハトラレチマッデルシ、カズデオギナウ”ニモヒドデガタリネッペ」
ガルシアさんの問いへの、美織里の答えはこうだった。
「いま赤松さんが説明してくれたじゃない。足りないのは指揮をとる大物なわけでしょ? それと一点突破の火力かな――だから、そういう人材を育てて送り込めばいいってこと」
しかしそれに、山際さんが異を唱える。
「育てても……D&Rに引き抜かれるだけなのでは?」
美織里の答えは――更に悪そうな笑みだった。
「協会のデータベースで見たんだけど、山際さんってJリーグが好きなんだよね? 国外のリーグの方がずっとレベルが高いのに、どうして?」
「応援したいという……気持ちにレベルは関係ない」
「だよね? で……それって選手にも言えない? 海外リーグで活躍する実力があるのにあえて国内でプレイするって選択をしている、そういう選手もいると思うのよ。我が社はそういう選手――探索者を引っ張って、力を与えたい。赤松さんが言ったような状況になってるのは、そういう彼らにまだ力が無いからだと思うのよ。そして欧州各地にご当地の英雄を作って、D&Rが手を出さない中小規模の仕事に金銭的価値を与え――Jリーグみたいにね――D&Rが手を出せない市場を作り上げる」
「なるほど。で、肝心の人材育成は? 誰が? どうやって?」
「それは赤松さん――あなたたち3人」
「「「げ」」」
「安心して。あなたたちの上にも1人付けるから――マリア・ガルーンって人をね。まずは、あなたたちに強くなってもらう。早ければ8月中にはトレーニングに入って、トレーナーとして働いてもらうのは来年度から。そしてトレーニングの拠点は
「……凄かった。特にスバルが」
「あの車、全部うちのものになるって言ったらどうする? データ収集のためにD&Rに貸し出されてる車なんだけど、その契約を、全部うちがかっさらう。傲慢なのよ……D&Rはね。探索者こそがあらゆるアート、スポーツ、エンタメの上位にあると考えてる。聞いたら、データ取りにD&Rが寄越す探索者が酷いらしいのよ。メーカーが探索者でデータを取るのは、半端ないGに耐えながら半端ない精度でマシンを操り半端ないスピードを出せるからなのに、D&Rは半端な身体能力強化しか生えてない遠距離攻撃専門の探索者を送って来て、
その日はホテルに泊まって、翌日は朝からサーキットで走った。
赤松さんたちも一緒で、やっぱり評価は高かったらしく、車を降りると偉そうな人たちに囲まれていた。
そして夕方の飛行機で、僕らは日本へと帰ったのだった。
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お読みいただきありがとうございます。
久々に登場の3人です。
なお、ファストファインダースの残りの3人については後々語られる予定。
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