叔父に家を追い出された僕が異世界から来た猫と出会い、ダンジョン配信でバズ狙いすることになった件。ちなみに元アイドルで美少女探索者の従姉妹は僕にべた惚れです

王子ざくり

猫との出会い、従姉妹の帰還

1.猫を拾いました

20話くらいまでは毎日投稿を目指します。

よろしくお願いします。


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「今日はアシタバとタラの芽が採れたから、天ぷらにしょうかな」


 その日も山の酷道を帰りながら、僕は日課の山菜刈りに勤しんでいた。


 僕は春田光はるたひかる

 高校一年生で、山にある小屋で一人暮らししている。


 十歳のとき父さんと母さんが亡くなり、それから僕は町にある祖父じいちゃんの家で暮らしていた。


 じいちゃんは僕を可愛がってくれて、地元の会社の株をたくさん持ってるとかで、経済的にも裕福だった。


 でも去年の秋、じいちゃんもこの世を去った。


 じいちゃんの遺産で僕が相続したのは、山の中にある小屋と、いくらかの現金。それ以外の、町の家や有価証券は全て東京の叔父が相続することになった。僕が相続した現金は弁護士が管理していて、18歳になったら僕に渡されることになっている。


 いま、じいちゃんの家には東京から引っ越してきた叔父一家が住み、僕は山の小屋から高校に通っている。


『じゃあ、そういうことになったから』という叔父の一言で、僕はそれまで住んでた家じいちゃんのいえを立ち退くことになった。


 それでも一応、叔父が僕の保護者ということになっていて、僕は毎晩、現在は叔父のものとなったじいちゃんの家で夕食を食べている。


 夕食といってもおにぎりと味噌汁だけで、時々、からあげが一個か二個添えられているくらい。でも叔父としては、それで保護者としての義務を果たしてるということになってるらしい。


 そんな食事だから、5分もかからずに食べ終わってしまう。食事が終わったら、僕はすぐに小屋へと帰る。それ以上叔父の家にいると『おまえ、まだいるの?』という顔をされ、時には口に出して言われることさえあった。


 正直言って叔父の家で食べるあの食事よりも、同じ量の米と味噌か現金を、そのまま渡された方が良かった。学校から叔父の家まで20分。そしてその後、小屋まで帰る道のりが1時間。正直、現物支給の方が余計な時間を使わずに済んで僕にはずっと助かる。


 でも叔父の家に行かなければ行かなかったで『何故来なかったのか』と電話で詰められて、酷いときには町の家まで呼び出されておにぎりと味噌汁を食べさせられる羽目になる。


 日課の山菜刈りは、足りない食事を補うのと、気晴らしのためだった。


「今日もおそくなっちゃったなあ……」


 そんな愚痴を吐きながら、僕は山の中を歩く。

 小屋に帰ったら、食事をして、風呂に入って、好きな配信者のライブを観ながら寝落ちするのだ。


 それが、いつものことだった。


「……!?」


 でもいま、歩き慣れた道が、一瞬で違和感に包まれていた。

 音だった。

 おかしな音がしたとかではない。

 逆に、おかしなほど音がしなくなっていたのだ。


「なんだ、あれ……」


 見上げると、夜空の一部分が、まるで消え失せたみたいになってた。


 真っ白く光る『何か』が、重なり合う木々の、枝葉の向こうの夜空を静かに通り過ぎていく。


『何か』が向かっているのは、僕の住む小屋の方角だ。


 僕は、走りだす。


 真っ白な『何か』のスピードは意外と遅い。時々ショートカットしながら、国道を走って追いかけることができた。


 小屋に向かって山を駆け上がる僕と合わせるように『何か』も次第に高度を落としていく。


 そして、僕が小屋の前に着くのと同時に『何か』も地面に落ちた。


 何だろう――好奇心と、放っておいたら取り返しのつかないことになりそうな嫌な予感。茂みの向こうの斜面を降りて近付くと、『何か』の放つ白い光がどんどん小さくなっていく。


 やがて光が消えた後には、鈍色の塊が残されていた。


 更に、僕は近づいていく。


 それ・・と出会ったのは、鈍色となった『何か』が軽自動車くらいの大きさでコッペパンみたいな形だとわかるくらいの距離まで近づいたところでだった。


 2本足だった。

 一歩一歩確かめるように歩いて――倒れた。


 それ・・は、猫だった


 空を飛ぶ何かから出てきた、2本足で歩く猫。猫が2本足で歩くのは、ありえないことではない。そういう動画は、ネットにいくつも転がっている。


 しかし、空から降ってきたあの『何か』が何なのかは分からない。正体不明だ。古典的な意味での、宇宙人の乗り物としてのUFO? UFOからどうして猫が?  UFOに攫われた猫? だったら、あの鈍色のコッペパンの中には宇宙人? それとも無人機?


 混乱する僕の頭の中で、言葉が浮かんでは消えずに増え続ける。そしてその中の1つが最後に輝き、自己主張した。


「ダンジョンモンスター?」


 ダンジョン――10年前に突如として世界中に現れた迷宮。そこに棲むモンスターに対して現代兵器は効果が薄く、探索者と呼ばれる特殊能力者たちが駆除にあたっている。


「ダンジョンから出てきたのか……でもあんなモンスター、いなかったよね?」


 ダンジョンからモンスターが出てくるのは、珍しいことじゃない。だから学校ではモンスターに遭遇したときの避難方法を授業で習っているし、スマホの待機画面にはワンクリックで通報出来るボタンが付いている。

 

 モンスターの種類についても情報が公開されていて、お金のない僕にはそれを見るのも良い暇つぶしになっていた。


 でも、あんな巨大なコッペパンみたいなモンスターの情報なんて、見たことがなかった。


「じゃあ……やっぱりUFO?」


 だったらどうして猫が? と考えが堂々巡りを始めそうになったのと同時に、あっさり答えが出た。


「君の考えは正しい――半分はね」


 そう言ったのは、猫だった。


 

 僕は――狂ったのか?


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お読みいただきありがとうございます。


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こちらの作品もよろしく!

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