見上げた空に呟きを

水上絢斗

第1話 お昼休みの野菜炒め


 昼休み、会社の外へ食べに行く人で、エレベーターは混んでいた。非常階段を使って外に出るのは、なにも人混みを避ける為ではない。人目を避けるためだ。誰からも干渉されず、息苦しさから解放される瞬間だ。

 お昼ご飯を食べる場所は、いつも決まっている。誰も来ないであろう建物の小さな庭の隅っこだ。木や草花が植えられているが、ベンチ等はないため、隅っこの段差がちょうど腰かけられる。晴れている時は、ここで過ごせるが、雨の日は場所がなく頭を悩ませる。

 昨日の晩御飯の残り物を、詰めたお弁当箱を開ける。中身は地味な野菜炒めだが、唯一お疲れさまと言っているような気がする。大きく深呼吸して、空に向かって息を吐く。

「おばあちゃん、今日も頑張っています。何事もなく終わりますように。」

いつもの言葉を呟く。おばあちゃんは、もういないが両親が共働きだった為、おばあちゃんっ子だった。

何かあったときは空に向かって呟く。寂しく思わないように、空から見守っていると強く思って生きてきた。

「いかん、いかん、早く食べなきゃ、お昼終わっちゃう。」

感傷に浸ると、あっという間に時間が過ぎる、少しでも気を紛らわせるためにご飯をかきこんだ。そして、物思いにふけつつ、ぼーっとして、午後の業務に会社へ戻る。





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