まだ誰も

三瀬未悠

まだ誰も

生まれ落ちたよ春潮に選ばれて

鳥帰るお伽話の終わるとき

桜守墓守子守はるのうた

泣くときの形は秘密チューリップ

陽炎に拐われていく子どもたち

薄暑光ショートケーキの壊し方

浴室に彼女の歌う夏の月

玉ねぎを剥けばなくなる今日のこと

スプーンにゼリーに君の眼に私

線香の匂いの届く夏の端

約束が増えて夏野は輝いて

金秋へ歌えば動くあばら骨

どうしても眼鏡がずれている遺影

月影にクリーム色の団地群

重力の夜まだコインランドリー

窓に星くじらの眠る水平線

人間に魔法があってクリスマス

冬天へ鳥になるなら君の手で

待春のドーナツドレミ土星の輪

まだ誰も知らない冬星のひかり

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まだ誰も 三瀬未悠 @misemiyuu

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