第一章 第九話
第九話『続く。』
「…んぁ。」
ふあー。ここどこ…?
ああ。たしかクリムにスケルトンを倒してもらったんだっけ?
ふと、足元の月明かりに照らされた置手紙に目が行った。
…。
はーあ。
そういう事ならいいや。
私は、酷く、絶望した。
オーバーディオ。
スキルを使った実験団体。
ディオスキルを作ろうとしている。
ディオスキルは、セットスキル最強のスキルだ。
しかし、セットスキルは性格、価値観によるものだ。と、最近の論文で発表された。
…もし無理やりセットスキルが入れられたら?
そのような人格になってしまう。
『セットスキル 道化師』。それがこのピエロ、いや「イビルジョーカー」のスキル。
本体は時折話している。助けを求めるような口ぶりで。
あれが本当の人格で…こっちはセットスキルの人格。
点が線になった。
「サア!ここからは本気の勝負だ。君がどれだけ強いかミテミタイ!」
?
本当の人格が、戦っている?
それに気づいた瞬間、その誠意に応えるべく、出せる限りを出す俺は出した。
「いくぞ。」
体は強くなった炎に包まれ、半分ドレイクへと成った。
鎌に対して、垂直に鱗付きの肘を入れた。たちまち鎌が壊れたように見えた。
しかし、鎌はイビルジョーカーの力で修復された。
すかさずジョーカーは、はらわたに鎌を入れてきた。
体力がもうない。元気はある。
戦闘中というのに、膝をついてしまった。
どうにか…体力が回復できれば…。
「…『
段々と体が軽くなり、傷口がふさがっていってる…?
そう不思議に思っているとサーカス小屋の観客席から、
「この、クリムのバカ!あんなので私が帰るわけないでしょ!
なんなの?あの「君を傷つけたくない」って。
私もクリムに傷ついてほしくないの!勝手に援護はさせてもらうよ!」
と言う叫びが聞こえた。
力が沸き上がった。その時、
「…君は間違えている。…破撃は遠距離じゃない。近距離技。」
と、イビルジョーカー…いや、この人からつぶやきが聞こえた。
冒険者からの最後のアドバイス。
それはどんな助言よりも輝いていて、暖かかった。
「破撃!!」
近距離ですることにより、周囲に風が起きず、力が一点に注がれた。
これが、破撃本来の力…。
死に際の勇者が語り始めた。
「おめでとう。僕はもう死ぬんだ。」
あぁ、現国王。すみません、勘違いをしてしまって。
また、オーバーディオに…やられた…。
そこから俺はずっと声をかけ続けた。
しかし、俺の言葉なんて聞かずに上の空で、独り言のように地面に言葉を吐いていた。
「オーバーディオ。君たちなら壊せる。
ボクコンナトコロデオワリタクナカッタ。
けど潮時みたいだ。次の冒険者に思いを渡そう。
ハナシタヨネ?キングノハナシ。
キング。僕の父はこの奥で骨になってる。
ボクガコノ『ホウセキ』ニ『タマシイヲトジコメタ』。
だから、この宝石を骨の近くにおいて。
コノクニヲタノシクスルノサ。」
一通り吐き終わったのを確認して、
「ありがとう。」
とだけ言った。スノーはすべてを理解してくれたようだ。
「全ては、キミトクニノミライの為。」
消えた。敵に向かって初めて…目が濡れた。
それから、奥にあった骨に今貰った暖かい宝石をかざした。
いままでのこの国での記憶がよみがえっては消える。とても濃い短い時間だった。
骨がカタカタと音を鳴らし元国王が起き上がった。
「これは…どういう事だ?」
事情をすべて説明した。
すると国王は、すべてを理解したようで、
「ならよい。」
とだけ言い人の手ではないはずの、冷たくかたいはずの、骨の手で俺を撫でた。
暖かかった。
「つらかっただろう。この国の再建は私がしよう。」
そう言い、引っ張り出されたもうほぼ布切れ同然のマントを精一杯にはばたかせた。その姿は気高くかっこよかった。
その時、黒い髪の毛のショートカットのおかしな王子のようなものと、肌が緑の執事のようなものがやってきた。
その二人はやっと見つけたと言わんばかりの顔で
「頼みがある。あなた方と同行したい。」
と頭を下げてお願いされた。
もちろん断りはしない。しかし、なぜかが気になり聞いた。
どうやら、俺たちの戦いぶりが「この人たちとなら」と希望を持たせてしまったようだ。
「なるほど。オーバーディオに実験された恨みを持っているから、オーバーディオに復讐がしたいと。」
そう聞くと、二人はこぶしを握りうなずいた。
よく自己紹介もしなかったが、意志だけは感じた。
このメンバー…意志の硬さだけで集まった感じも往々にしてあるからな。
その願いに軽々OKを出して、国王に簡易的な船を出してもらった。
次の国での冒険が始まる。
…また、賑やかしが増えたな。
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