愚かな僕はそこで生まれた

夢眠

愚かな僕はそこで生まれた


まばたきがやけに鮮明に見える時

ああこの人も死ぬのだと思う


重力が弱まる冬があったなら

愚かな僕はそこで生まれた


味のないサラダのように閃いて

点滴の時間だけ恋をしている


似合わない派手な下着をつけてきて

右の乳首を溶かすことわざ


混雑が右か左か分からずに

テクマクマヤコン 生きていいの?と


ふかふかのベッドの縁に座るまま、

言葉は今を拒む血圧


悲しみを胃に残したまま僕達は

まるで静脈だけの生物


身分証に古いわたしが張り付いた

元をたどれば同じ水色


ただダサく悲しい音が好きなだけ

冷たい皮膚に触れて離れぬ


初恋を横目で見てる 

灰皿が水を落とされ気付く青空


時として笑みは僕らを殺すから

牛乳のように食感を消す


もういない猫たちがいる日を想い

可笑しくなって紺の目薬


タオルから腐臭 誰もが駅員で

みなしごたちの面倒をみる


開けない日記の付箋に触れられて

すべてのものは鯨になるよ


いつか血が細いぼくらを抜け出して

怖いおばけをたべますように


精神は遅れて成長しないまま

背骨が食パンのように膨らむ


明日もまた自死した友を思うだろう

僕の故郷にコアラはいない


広告の顔に消しゴム押しつける

電車から見て右側の肺


炒飯の煙のように優しくて

ブロッコリーみたいに故郷の緑


夢をみる もやしが生えて人が死ぬ

脅されたって僕は僕だよ

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愚かな僕はそこで生まれた 夢眠 @moomin_mumin

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