半端な白湯

苑の茅舎

半端な白湯

針供養刺さりし角の崩れをり

手品師の摺り足が薄氷割る

流氷の来て西国の香を憶ふ

潮風に髪を梳かるる田打かな

両岸に光溢るる竹の秋

はつ夏の煎餅起伏少なしや

どくだみや錠前提がる蔵のあり

雲流るとき黒ずみし青田かな

夏暁の筋カーテンの隙間から

平行に三隻並ぶ舟遊

徳利を逆さに墓参より帰る

単線の駅に交はる黍嵐

障子貼るうちに眠気のきたりけり

灯火親し胡座の脚のまだ痺れ

水温の半端な白湯や秋の暮

かはいいと連呼の婆や実南天

マフラーで包む形見の腕時計

焼かれたる牡蠣全身で応へけり

灰色となる歳晩の朝の川

悴みし指を佐渡まで真つ直ぐに

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

半端な白湯 苑の茅舎 @enno_bousha

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る