第1回カクヨム短歌・俳句コンテスト短歌の部 二十首連作部門

冬川凍

探検

木星の縞は瓦斯でできている いつかの原子留める地層

地球とは違う夜空を見てみたいアルタイルまで旅をしてみる

帰り道冥王星でデータ取るついでにこれもお土産にしよう

ずっと広がる宇宙の端を目指すため僻地でワープの練習をする

遅れそう待ち合わせ地点アルファ星ジェット吹かしてコーヒーを飲む


本を閉じ記号の世界一つ選び作った射影でついついうとうと

昼寝せん獏呼ぼうとして用意する雲のまくらと雲のふきだし

石並ぶ深夜ゾンビとかくれんぼ見つけても名前分からなかったな


霧が出てひとり夜道にはぐれたりサーチライトを目指して進め

洞窟へ世界の秘密聞きに行く「秘密などないそれが秘密だ」

海底へ光の伴も少ないがシーラカンスと共に逆立ち

飛行機が砂に埋まり風が吹く駱駝と眺む南十字星

湖畔にて木陰に隠れ見張りする謎の生物が居ると聞いた


夏の日に麦わら帽を被りゆく裏の畦道木洩れ日と影

見計らい本棚ようやく動かして見つけた暗がりちょっとだけ行く

坂の町なんとはなしに振り返る石と海とはどこまで光る

薄緑丘にすわってお茶を飲み遠き故郷の景色を想う

灯台と錨があればいいのにな定住の地はなくていいから


昼下がり光りまぶしい雲の中氷のしずく言葉を交わす

可視域は有限なれどつかれけり その波長は今日店じまいです

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

第1回カクヨム短歌・俳句コンテスト短歌の部 二十首連作部門 冬川凍 @fykw

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

同じコレクションの次の小説