さっきも言ったように、私の部屋は、綾乃の部屋とトイレの中間にある。だから、綾乃はトイレに行くときには必ず私の部屋の前を通るのだ。


 綾乃は夜の11時過ぎに必ずトイレに行く。私は11時まで自分の部屋で息をひそめて待ったの。


 11時過ぎに、いつものように足音が私の部屋の前を通ってトイレに向かった。綾乃だ。私は用意したかんぬきを持って、そっと部屋を出たの。


 トイレに入ると、一番手前の個室のドアが閉まっていた。綾乃が使う個室だ。


 今だ・・


 私は足音を忍ばせて、一番手前の個室のドアに忍び寄ると、一気にかんぬきをドアの取っ手に掛けたのよ。個室の中で、綾乃が息を飲む気配がした。


 私は綾乃に声を掛けた。


 「綾乃。今度はあなたが怖い思いをする番よ。そうして、この前のことを個室の中で、たっぷりと反省しなさい」


 そうして、私は灯りをすべて消してトイレを出たの。トイレから出るとき、個室の中からドアをドンドンって叩く音が聞こえたわ。


 私は自分の部屋に戻ろうと廊下を歩いたのよ。すると、綾乃の部屋の方から・・話し声が聞こえてきたの。


 あれ? 綾乃の部屋に誰かいるの? 私は綾乃が誰かお友達を部屋に連れてきているのかと思った。それで、自分の部屋を通り越して、綾乃の部屋の前まで行ってみたの。


 綾乃の部屋のドアが半分開いていて、その隙間から明るい光と笑い声が洩れている。

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