四季の端々

@savata

第1話

春泥を握り締めたる花根かな

若松の柔らかき指浅緑

若草の匂い抱えし泥温く

木下闇潜めし笑みの響きをり

陽炎や会ひたき人の影となり


炎天や巌の縁を歪めをり

サルビアの燃え立つてゐる通学路

夏影の飛石跳ねしランドセル

砂浜や波頭の頂く晩夏光

短夜を更に縮めし星さやか


夕闇の深みにそつと赤とんぼ

青空に読点を打つ熟柿かな

秋暁と境忘れし並木かな

転がりし音軽やかにどんぐりこ

駆ける背を追い立てるやうに秋の暮


冬ざれの庭先で踊る土人形

砕け散る硝子の如し冬怒濤

隙間風カーテンレールを奏でをり

本めくる指滑りよし冬日和

土かけて忘れたふりの冬菫

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