背泳ぎの空

津島ひたち

第1話

体温を注がれ待ちの氷たち バス停でスカートのわたしたち


濃緑が窓の向こうで燃えている わたしはcanで作文をする


全容を眼の全体で捉えつつページをめくる夏のきみの脈


きみの腕に耳をおし当てつつがなく溶け合わないことを確かめる


スーサイド・イン・ポルトフィーノ その青を光の加減といつか呼ばれて


肩甲骨を透かすブラウス(そういえばきみの夜中を見たことがない)


手袋の指で押さえて赤文字をなぞってバスはときどき止まる


眠りながらバスを降りれば光る塾 頭痛は後ろへ移動している


一日に三度着替える三度目を終えてカロリーメイトの表情


もういない人の横顔をしてきみは赤い三輪車を蹴り倒す




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