RAGNAROK GAME ~ヲタク少女はスーパーヒーロー~
杵露ヒロ
第1話 我孫子エルダ
初夏。
梅雨の合間のいい天気。
こういう日は颯爽と登校しないとね!
風を切り、ふわりと自慢の金髪がなびく。
「Guten Morgen!」
わたしは人々を追い抜く度に声をかける。
わたしは『我孫子エルダ』。
日本のアニメ、ゲーム、漫画文化が大好きなドイツとのハーフな帰国子女の18歳の高校2年生!
え?18歳は3年だろ?ですって?
Nein、Nein!
わたしは大怪我でドイツの病院でリハビリ入院して休学してたからまだ2年生なの!
どうしても日本の高校に通いたかったから休学してたの。
まぁ、でもリハビリの結果も残念な事に、わたしの足はもう動かなくなってしまったけどね。
最初は塞ぎ込んだけど、大好きなグランマの言葉で立ち直ったの。
そう、こんな話をしたわ。
『エルダ。貴女のその動かない足は世界で誰も持たない勲章よ?』
『でも、もう、お馬に乗れないわ!』
わたしは乗馬の選手だったの。
ある日のレースで、事故を回避しようとした結果、落馬。腰を強く打ち、腰椎骨折。大手術の結果も虚しく、わたしの足は動かなくなってしまったわ。
『い~い、エルダ。貴女のあの時の判断はとても正しかったの。もし、貴女が判断していなかったら、どうなっていたと思う?』
『…』
『あのレースに参加した騎手もお馬もみんな巻き込んだ大事故になっていたの。騎手もお馬も、命を落とす人も出てただろうって。協会の方々と政府から貴女だけの勲章を貰ったわ』
そう言い、グランマはわたしの胸に勲章を着けてくれたの。
『でも…どうすれば…』
『簡単よ!愉しむの!』
『愉しむ?』
『そうよ。足が動かないから何?貴女の魅力は何一つ変わらないわ。足が動かないなら、その世界を満喫するの。グランマだって年だし、病気もしたけど、毎日愉しく生きてるでしょ?』
『うん』
『エルダ。グランマとの約束。自分の世界を思いっきり愉しむ!やりたいことは何でも挑戦するの。そして、そのお話を必ずグランマにするのよ?』
『うん!』
『いいこね、エルダ。ポジティブに、ポジティブに、よ?』
こんな具合にね。
ちなみにグランマもグランパもドイツで毎日元気に、ポジティブに、悠々自適に生きているわ。
国道を渡る交差点。
ここにはいつもの彼等がいるわ。
「車椅子のねーちゃん!今日も勝負だ!」
わたしに声をかけてくるのは地元の小学生の児童達。
そう、わたし達はどちらが交差点を早く渡りきるか、という勝負を続けている。
子供達が挑戦してくるんだもの、受けないわけにはいかないわよね?
この交差点では最早名物(迷物)となっているこのレース。
横断歩道に旗を持って立つ若いママもおばあちゃんもお巡りさんも固唾を飲んで歩行者信号が青になるのを待つ。
ピッ!
信号が間もなく変わる合図。お巡りさんの警笛の音ね。
ピッ!!
ピッ!!!
ピッ!!!!
ピーーーーーーーーッッ!!!
青になる合図と同時にわたしは全力で車椅子をこぐ!
このためだけにグローブしてるんだから!
うん!
スタートダッシュ、完璧!
コース取りも完璧!!
わずか、数メートルの勝負、今日もわたしの勝ちね!
「また負けたぁ!」
子供達の悔しがる声。
「まだまだね!」
大人気なく勝ち誇るわたし。
そこに…
ハァイ♥️
地球のみんな~、今日もエンジョイしてる?
みんなのアイドル、アポカリプスちゃんですよぉ✨
朝からカワイイアポカリプスを見て、元気でたかなぁ?
この、変なのが『アポカリプス』。
うん。例の黙示録そのものなのよ、此が。
こいつこそが世界の破滅を回避するためのゲーム。その名も『ラグナロク・ゲーム』の水先案内人だ。
日本のアイドルみたいにコスチュームとかはかなり凝っていて、服はカワイイ。見た目もそんなに悪くないと思うけど。
そこはかとなく、キャラ性がうざい!
時間関係なく、アポカリプスの気まぐれか何かでクエストが告知されるのよ。
いい迷惑よね。
今日のクエストわぁ、大型ケイオスビーストの討伐よぉ♪
今日わぁ、クエスト開始時間と参加人数をサイコロ2個の出目で決めちゃいまぁ~っす♥️
先ずわぁ、クエスト開始時間!
いっくよー♪
わお!出目は8ね。
つまり、クエスト開始時間は今から8時間後の16時!
さて、お次は参加人数よぉ♪
え~い!
あ、あれれぇ
ごめーん、ピンゾロぉ!
ペロッと舌を出して頭を掻くアポカリプス。
ま、まぁ、しょうがないよねぇ。公平を喫するためのサイコロだしぃ。アポカリプスは悪くないわよね!
気を取り直して、まとめるとこんな感じッ!
ー デイリークエスト ー
・ケイオスビーストの討伐
クエスト開始時間:16時
クエスト参加人数:2人
ちなみにぃ、気をつけて欲しいのわぁ、参加人数はピッタリ2人ね。
ソロもダメだけどぉ、3人以上もダメだからね♪
アポカリプスからの注意よ~。
それとぉ、報酬わぁ…
『クエスト優先参加チケット』よ!
これわぁ、好きなクエストに割り込めちゃうインチキアイテムよ!持っておいて損はないから、今日のクエストも頑張ってね♪
モ・チ・ロ・ン♥️
クエストの様子わ、アポカリプスの専用生配信チャンネル『アポカリプス・なう♪』で配信するから、楽しみにしててねぇ~ん♥️
ここで、アポカリプスは姿を消す。
こんなのは日常茶飯事なので、みんな動じてない。
それどころか…
「うおー!生配信見れんじゃん!今日はどのヒーローが活躍するかな!」
等と子供達は活躍するヒーローやヴィランの話題で持ちっきり。
この、ラグナロク・ゲームに参加できるのは
その
ちなみに賭けなんかも行われてるみたいよ。
さっきのクエストにはヒーロー陣営とヴィラン陣営のガチバトルとかもあるわ。何て言うか、とっても盛り上がるのよね。
「全く、毎朝飽きないわね」
そこに現れたのはわたしの親友。名前は。『橘ミコト』。
背が高めでスラリとした細身…というよりは痩せぎすね。フォローすると、鎖骨のラインはとっても綺麗よ!
バストの形も大きさも悪くないわね。
肌は青白く、髪は腰くらいまでの白髪。瞳は赤い。アルビノみたいね。
「Guten Morgen!ミコト!」
「おはよ」
ミコトはスッとわたしの膝の上に自分の鞄を乗せて、わたしの車椅子を押し始める。
「ねえねえ、さっきの見た?」
「アポカリプス?」
「Yha」
「ホント、朝からうざいわ。気分が滅入っちゃうわよ」
「あはは。まぁ、うざいのは同意見ね」
そんな他愛のない会話をしながら学校に着く。
ミコト自体はわたしの介助は手慣れたもので、靴の履き替えなんかもテキパキとこなしてくれる。
「お~い、男子!手伝って!」
わたしが声をかけると数名の男子が直ぐに駆けつけてくれる。
「おっ、我孫子に橘、おはよう」
「おはよう。いつも手伝ってくれてありがとうね」
「いいって。俺らも早く我孫子と勝負したいからよ。ところでさっきのアポカリプスたんの…」
「あんなのたんとかつけて呼ばないで。気分が滅入るわ」
「なんだよ、橘にはアポカリプスたんのカワイサが分からないのかよ?」
「カワイイ?うざいの間違えでしょう?ねぇ、エルダ」
「う~ん、そうねぇ。見た目だけはカワイイと思うよ、アポカリプス。うざいのは同意見」
「ま、いいけどよ。それはそうと、今日はどこでバトルのかなぁ、生配信楽しみだぜ」
なーんてのは、日常の会話。
因みに勝負ってのは『ラグナロク・ゲーム・トレーディングカードエディション』の話。
わたしは毎日の様に男子達とカードゲームの勝負をしているの。あ、負けた方ジュース奢るってことになってる。
負けなしのわたしは毎日タダでジュースもらってるのよね~♪
1日、どことなくそわそわしている学校。
それもそうね。
だって、16時には日本のどこかでラグナロク・ゲームのクエストがはじまるのだから。
そして、学校も終わり、間もなく16時。
ハァイ♥️
みんなぁ、お・ま・た・せぇ🎶
アポカリプスでぇ~っす✨
あとちょっとでぇ、クエストの時間だよぉ?
スマホやタブレットは『アポカリプス・なう』にアクセスしてるかなぁ?
今日はどこに、ケイオスビーストが現れちゃうのかなぁ?
ワクワク、ドキドキだねぇ‼️
ち・な・み・にぃ
何処にケイオスビーストが現れるのかわぁ、アポカリプスにも分からないのぉ。
ホント、ドキドキ!
さぁ、時間でぇ~っすぅ!!
ラグナロク・ゲーム、スタートぉ!
そして、今日のゲームがはじまる。
地面を突き破り、現れるケイオスビースト(と呼ばれるモンスター)。それも、今日は2体。
それと同時に、学校に爆音が届く。
「おい!見てみろよ、あれ!」
男子が窓の外を見ると、そこには映像と同じケイオスビーストが…
まぢか。
今日、この街なのね…
さぁ、どの
早くしないとぉ、街のみんなが危ないよお♥️
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