異世界に転生してすぐそばにあった段ボールを被ったら最強になったので無双して主人公枠を勝ち取ります

欠完成品

第一箱 俺と異世界とダンボール

001

俺こと人喰ひとくい人物じんぶつが異世界に転生して一番初めに見たものは、

それはそれはまぁ極普通の段ボールだった。

『……いや何で?』

なんかこう……違うじゃん?

可愛い幼女ロリとか妖艶な美女とか……。

そうで無くとも伝説の剣だったりとかさ……。

もうちょっと選択の余地はあったわけじゃん……?

なのに何であっちの世界にもある物なのかな?

『……初手から意味わかんねーよ異世界……』

まぁそんな私利私欲に駆られた思考を保ちつつ、

俺は後に相棒(不可抗力)となる段ボールと初の邂逅を果たしたのであった。



というかそもそもの事の発端は五分前、

俺が突然神様から話を持ち掛けられた所から始まる。

「……」

『……』

深夜2時、ベットの上で俺にのしかかっていた。

「……汝、転生の素質有り…」

『……まずどいて貰えませんかね』

ハッキリ言って重い。

「……すまぬ、転移テレポーテーションにはなれなくての」

『当て字はカッコいいですね……』

「ありがとう。よいしょっと……さて話を戻して。

もう一度言うがお主には転生の素質がある。やってみらんか?」

そんないきなりバイトみたいに持ち掛けられても……。

『ちょ、ちょっと待って下さい』

「ん?」

『いきなりそんなこと言われても』

「うむ、そう言うと思ってパワポで解説を作ってきたぞ」

『パワポで!?』

かなり現代的な神様だ。

「いやー口頭だと分かりにくいというクレームがTwitter……いやX?で殺到してな…」

クレームまで現代的だった。

『は、はぁ……』

「ま、そういうことじゃ。

取り敢えず流すから寝ずに見てくれるかの?」


その後。

俺は異世界に転生するメリット~貴方が世界を変える~

なる題名の説明を受けてきた。

要約すると

・このつまらない世界から脱するチャンス!

・なんと今から五分間無料受付中!

・更に今なら物凄く強い能力が手に入るぞ!

・限定パスコードは”TENSEISAIKOU!”

・お金も沢山手に入る!

・さぁ、みんなも一緒に転生ライフを楽しもう!

とのこと。

成程…。

『クソゲーの広告かよッ!?』

「皆それ言うのう……」

なら変えろよ!?落ち込む前に元凶を潰す努力をしろよ!?

『というか何でこんなパワポになって……』

「いやーDMで募集したらこれ系の奴が大量に来ての」

おーい。詐欺られてますよそれ。

とは流石に言えなかった。

というか神の御前で言えることでは無い。

「……で、どうじゃ?転生する気になったかの?」

『……』

うーん……。

クソゲー感のあるパワポはともかくしてしかし。

はっきり言ってかなり興味が湧いてきたのも事実だ。

『俺TUEEEEEE!でスタート切れるんならありかもなぁ…』

そう呟き。

「じゃ、決定って事でいいの?」

『……え?』


瞬間、視界がブラックアウトした。


002


そして突然目の前が開けた。


『眩ッ!?』

余りに急な出来事だったので思わず目をつぶってしまう。

やがて少しずつ光に慣れ、

ゆっくりと目を開いた。

その先にあったのは。


そして冒頭001へ戻る。

『……』

……いや理不尽!!

『クッソなんでこんな事に……なぁ段ボール。お前もそう思うだろ』

俺は気がおかしくなったのか段ボールに話し掛ける。

<……>


段ボール は 答えない。

まるで しかばねの ようだ。


『あーくそ、せめて人間だったら……』

まだ話が通じたのに……。

しかし、今俺の目の前にあるのは段ボール。

当然喋る訳もなくそこに佇んでいる。

『……ま、何時迄愚痴ってても仕方ないか。

取り敢えず今やるべきは……状況確認ってとこだな』

周りを見渡す

辺り一面には緑色の草々_____恐らく草原だろう______が広がっている。

そして奥には連なる山々と、街らしき物。

さらに目の前には段ボール。

空には。

ドラゴンが。


……ドラゴンが?


『はぁぁぁぁぁ!?』

頭の上をでっかいドラゴンがグルグルと旋回していた。

俺はすぐさま逃げようと走り出す。

が。

「グルァ!」

その行動が顰蹙ひんしゅくを買ったかは知らないがしかし

突然俺の事を追いかけてきた。

『!?早く逃げ』

不味い、と思った時には時すでに遅し。

目の前には既に奴がいた。

『……足速いっすね……』

「グルル……」

因みにこの間僅か10秒。

カップラーメンさえ置いてきぼりにする速度だ。

『……見逃して?♡』


お願い♡


「グラアアアアアアアッッ!!!!」


ダメでした♡


『……oh……』

……異世界ライフもう終わりそうなんだけど…。

しかしそんなことを意に介さずドラゴンは俺の方へにじり詰め寄ってくる。

相手の装備(?)は鋭い爪に獰猛そうな牙。

対してこっちは段ボール…なんで持ってきたんだろ…。

「グラアアアアアアアッッ!!!」

雄叫び上げながらドラゴンがその爪を高く掲げる。

あぁ、異世界に転生して約5分……短い人生だった…。

せめてもの抵抗として、俺は最後に段ボールを盾代わりに構える。

そして。


……恐らく普通の異世界転生系漫画ならここで主人公がダメージを

一切食らわず俺TUEEEEE!となるところなのだろう。

しかし実際にはそんな事は起こらない。


そんなに都合よく話は廻らない。


ただ必然のみ。


だから。


『……!?』


盾代わりに掲げたその段ボールは一切のダメージも食らわなかった。


確かに、現実はそう都合よくはない。

但しそれは側の話だ。

段ボールには、嫌が応にも適応されない________!。


003


『……おぉぉ!?』


そしてその段ボールは全てのダメージを


「グァッ!?」


ドラゴンの方も驚く。

…というか驚くのか…。

だがしかしこれで。

これで逃げ切れる可能性が見えてきた_______!

死地から一転、僅かだが生き残れる可能性が出て来る。


「グアァァァァ!!!」


……出て、来たよな……?

取り敢えず


『逃げの一手ぇ!!』


俺はドラゴンに背を向けると全力で走り出した。


「グルルルル!」


待てと言わんばかりの形相で追いかけてくる。

えーとこの場合守るべきは……頭!

俺は段ボールを頭に

……前が見えなくなる可能性を全く考慮していなかったがしかし

穴が開いているのか視界は良好だった。


『うおぉぉぉぉ!』


走りまくる。

流石段ボール。現代でも使われるだけあって軽かった。

が。

ドスンッ

……そりゃ幾ら軽くてもスピードは変わんねーよな…。

あっと言う間に追いつかれた。


「グルウウウウウ……」

『っマジかよ……』


このままじゃ一生鬼ごっこコース。

ならばどうすべきか。

答えは一つ。

ひとつしかない。


ここで。

こいつを。

るしか無い……ッ!


<お、遂にる気出て来たか>


そりゃあそうだよ。こんなとこで死ぬなんて御免蒙りたい。

……と言っても碌に攻撃力手段もないけど。


<ふーん……多分お前の力なら殴れば一発だと思うんだけどなぁ>


と、言うと?


<ま、転生特典で魔力と身体ステータスがすげー増強されてるから

それだけで位はいける>


成程、流石にあの詐欺神も仕事はしてるの……。

……。

…………。

………………。


『___いや誰!?!?』

<お、やっと突っ込んでくれた>


と、その声は突然話掛けてきた。

まるで電話に出るかのようなノリで。


<まぁオレだよ、うん、オレオレ>

『何だただのオレオレ詐欺か』

<俺が悪かったって>


…取り敢えず悪い奴では無さそうだ。


『で、結局誰なんだよ』

<お前が頭に被ってる奴だよ>

『……はい?』


回想。

えーとこの場合守るべきは…頭!

俺は段ボールを頭に


回想終了。

……傍点はフラグだったかクソが……!


<ま、そう言う事d…右!>


右?

視線を横に動か<違えよ避けろってことだよバカ!>そゆこと?

俺は慌てて右側に動こうとして


グシャっと。

間に合わなかった。

グシャ?


『____ッ痛った!?』


身体を見ると。

血が

 流

 れ

 だ

  て

 ?


『_______っ痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いいいいい!!!!!!!!!!!』

<落ち着け>


でも。

痛い。

血が。

やばい。

死ぬほど。痛い。

死ぬ?


<よく見ろ。もう傷なんてねえから>


嫌だ。

まだ。


まだ死にたくない。

こんなところで。


中途半端に。


痛い。

痛い。

痛い……く、な い?


俺は自分の腹部に視線を落とす。

そこには

もう。

何も、傷すらも。

無かった。


『は……え?』

<そういや説明してなかったな。今更だが俺の名前は”アリル”。

なぁに、ただの元伝説段ボールさ。>


そうして俺達は、本当の意味での邂逅を果たした。


004


元伝説、段ボール……?

それは一体、どういう

と、聞こうとしたところで。


「グァアアア!」


そうだった。

まだ戦闘は。


<終わってない…とでも言いたそうなひょうじょうだな>

『!』

<だぁが安心しろ。お前がちょっと勇気を出せばすぐれる>

『ゆ……勇気?』

<そうだ勇気だ……っと、よし、準備おk。何か武器イメージしてみろ>


武器!?

な、何かいい武器は…

俺は辺りを見渡して、そしてここが草原だったことを思い出した。

景色が綺麗だ……。


『ってそんな事今はどうでも良いんだよ!?』

<そんなに焦らなくてもいいぞ。落ち着いて、

これならって奴をイメージすんだ。>


これなら、勝てる……?

そう言われて改めて考える。

が、そんな武器、あるわけ……。


『……あ。』


そうだ。

1つだけ、というか日本人と言えば。

アレがあった。

世界最高峰の切れ味で。

長い刀身を持ち。

そして何より……カッコイイ。

あの武器が。


<ほう…日本刀カタナか!センスイイねー……よし>


ズンッ。


と。

右手に急に重さがのし掛かる。

その手には何時の間にか刀が握られていた。


『……!?』

<それが俺の能力、通称"ドリーム具現化キラー"。

ま、説明は後だ。今は取り敢えずアイツを殺すこと優先で行こう。

大丈夫。そう難しい事をさせようって訳じゃない。>



<それでアイツを真っ二つにしろ>



『…はい?』

<だから、真っ二つにするんだよ。その刀で、アイツを>

『はあああああああああぁぁぁぁぁ!?』


無理だろ!?だってアイツ俺の10倍位デカイんだぞ!?


<安心しろ、お前が思ってる100倍簡単だ>

『自信だけはあのドラゴンよりでかいな!?』

<だから落ち着けって…何だ?それともこれから一生アイツから逃げるのか?>


そ、それは……


<ならばシンジ、刀を振れ>

『無理だよ父さん!できっこないよ…!

ってやめろ!下手なパロデイは書籍化が無くなる原因なんだぞ!』

<そこを気にするのか……まぁ大丈夫。多分行ける(書籍化)し切れる>

『多分なのか!?』

<なら言い換えよう。大丈夫、絶対切れる>

『書籍化は無理なのか!?』

<無理だね>

『くそったれがぁ!』

<ってそんな話はどうでも……良くないけどいいんだよ!

分かったらとっとことっこu……じゃなくて、行け!>

『結局ダメじゃねーか!!』


と、言いつつも既に俺はドラゴンに向かって走り出していた。

このまま死ぬよりかはマシだ。

覚悟を決めて、走り出す。


残り20m


残り10m……って速!?


残り1m。

転生特典による身体強化なのかあっという間にドラゴンの目の前にいた。

勢いはまだついたまま。

そして刀を不格好に構える。

しかし相手もその手を振り上げていた。


多分死んだ。


が。


それでも。

俺はあの詐欺神に。

一言言ってやりたい。


やりたかった。

自分の命を犠牲にしたこの叫びを。


やっぱり。


この世界。



『クソゲーじゃねーかー!!!!』


そう叫び。


切り付けた。


斬り付けた!

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