限りない曲芸だった

岩瀬ゆ

限りない曲芸だった



獰猛をこころに飼い続けるために火の輪を何回もくぐらせて


いつか来る危機一髪の練習としてまたプリンをフォークで食べる


天気雨 空はおかしく晴れていてサーカスめく盆踊りがちかい


不安定のままでいたくて空中を何度も跳んでしない後悔


きつく縛れば縛るほどすり抜ける自由な人でありますように


乱されたドレッサーまで愛しくてピエロみたいなメイクだったね


歓声の数だけ隣のきみがいてきみの隣があげる歓声


大勢の不協和音として今日もメニュー表を放せずにいた


派手な絵の割引券を取るためだ初夏の職員室は涼しい


人のないところに人を呼ぶための旅だ 卒業式を何度も


いるはずのないゾウがいてゾウからはいるはずのないニンゲンがいる


繋がりがなくて種類もちがっててそれでも家族っだったよぼくら


ジャグリングしながら玉に乗るような生き方が好き ずっとこわいよ


食欲と少しの興奮だけ分けてください全てを忘れるための


グレイテストショーマン 誰かを幸せにする地方公務員になりたい


音のない会話がしたい 夕暮れの道にはパントマイムばかりで


花束へ行くために少女が履いたどこまでもどこまでも銀色


観衆が点を見つめるアストリー・ローヤル演芸劇場にある


素顔すら何度も見られた人にさえ見せない部分を秘める暗幕


不条理な世界を生きている君の曲芸をもう笑ったりしない

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限りない曲芸だった 岩瀬ゆ @hito_modoki_01

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