僕の好きな人とセフレになった元カノと
儚キ夢見シ(磯城)
第一章 僕と好きな人と元カノと
第1話 聖女様と天使様のいる学園
僕の家には聖女様が住み着いている。
これだけでは誤解を招きそうだから、しっかりと説明をしよう。
正しくは両親が海外赴任でいない僕の家に、同じく両親が転勤中の従姉が転がり込んできただけだ。
両親曰く、家に一人っきりでいるより僕と一緒の方が安全だと思ったらしかった。
僕に言わせてみれば、年頃の男の方が怖いと思うのだが、両親に無理矢理彼女に手を出したらナニとは言わないがアソコを切り落とすと脅されている。確かにその時ヒュンとした。元々手を出す気はなかったが、絶対に手を出さないという意志を固めた。
それから一年。今、僕はその聖女様に好意を抱いている。残念ながら、叶うとはとても思えない恋だが……。
♢
「それにしてもこの学園凄いよな……」
「何が? 何の前振りもなく振られても何の話だか全く分からん」
「女子の質、主に顔とおっp、ムゴムゴ……」
「……馬鹿野郎。口にするな。そういうのがコンプレックスな女子もいるんだぞ」
現に僕が口を塞いだから聞こえていないはずなのに明確な殺意を帯びた物凄い視線を浴びせられているのを感じる。なんで、僕? 理不尽だろ……。昼休み、女子のいる教室で白昼堂々話しているのはこいつなのに……。
この親友、
「なんとかしてモテたい……」
「それは努力しよう」
お世辞にも顔がいいとは言い難い親友。……まぁ、僕も似たようなものだが。
「折角、このクラスに学園の二大美少女がいるんだぞ! モテてお付き合いしたいって思うのは男の性として当然だろ」
「はいはい、そうですか」
「あの学園の聖女様と孤高の天使様っていう誰もが憧れる二人だぞ。それなのになんでお前はそんな無関心なんだよ……」
学園の聖女様と呼ばれる
二人に目をくれてみれば、聖女様は交際相手のクラスの王子様と呼ばれる
「……お前ほど、脳内を性欲に支配されていないから」
「まるで人を猿みたいに……」
恨めしげに僕のことを見てくる。
「否定はしないんだな」
「男は全員そういうもんなんだよ!」
「じゃあ僕は男じゃないということで」
「……」
中指を立てたそうにしているのをおっ、俺の指が勝手に……とふざけているので頭を軽く叩く。痛い痛いとわざとらしく仰け反られ、苦笑を漏らしてしまう。
「でもどう考えても聖女様も孤高の天使様も無理だからな……」
「そりゃ、二上には相手がいて、立花はまぁ……」
立花遥香が無理だと言われる理由は彼女が孤高の天使様と呼ばれる理由に直結する。彼女がそう呼ばれる理由は女子とは仲良く話すのに対して、男子に対する態度がすげな過ぎたことからだ。
具体例を挙げてみれば、告白の断り方。普段女子に向けている笑顔にやられた他クラスのイケメンくんが告白した際の断り文句が「私、あなたに興味ないから」という冷たいもの。その後、何度か受けた告白に対しても先輩だろうが誰だろうか関係なく同じように答え、あまりに塩対応過ぎると学園中に広まり、そのせいで実は同性愛者なのではという噂がヒソヒソと囁かれていた。
「ん? というか絶対無理だって分かってんじゃん。それなのになんで妄想を語ってくるの?」
「夢を語るのは自由だろ! それに別に女子は二人だけじゃ……」
「悪いけど、可愛い子には大体相手がいるっていうのが相場だから、他のクラスの可愛い女の子にも陽介以外の想いの人がいると思うよ」
容赦なく現実を突きつけてやる。
「ノオォォォ! ……お前は悪魔か……。純粋で健全な男子高校生に夢くらい見させてくれ……」
どの口が純粋で健全な男子高校生だとほざいているんだとツッコもうとした時、スマホがメールの通知を知らせる。僕の連絡先を知っているのは両親を含めて五人。目の前で馬鹿話をしている親友ではないことは火を見るより明らかなので残りの四人の誰か。また、両親は現在仕事でアメリカにいて、時間的に寝ているはずなのであり得ない。
そうなってくると残りの二人のどちらかか。スマホを開いてみれば、待ち受け画面には
「放課後、いつもの公園で」
そう短く打たれたメッセージ。
打った本人を見るも、その本人は今打ったメールのことなど素知らぬふりをして友達との会話に花を咲かせている。僕は溜め息を吐きながらバイトのシフトが入っていないことを確認して「了解」とこちらも短く返信をした。
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