たとえば、キミの肩にそっと花びらを乗せるような物語

奏月脩/Shuu Souzuki

あと8日 見つかっちゃった


 たとえば、用事があると言って申し訳なさそうに笑う君に、きまって行先を訪ねるような私。


 面倒くさい女だなって言いながら、素直に行先を告げてくれる君の顔がまだ遠い。


 私が「待って」って言いながら君の袖をつかんでも、君はいつも去り際にばかり欲しい言葉を残していく。


 それが君の照れ隠しだったなら、どんなに良かったことだろう。




 たとえば、「もしも私たちが幼馴染じゃなかったら……」なんて仮定の話に私が物思いに耽っていると、心から不思議そうな顔をして「そんなこと考えたこともないな」なんて平然と返してくる君。


 鈍感なくせに、「そんな暗い顔すんなよ」って無邪気に笑う君が来たのは、滅多に人の訪れない放課後の空き教室。


 突然小さい頃のかくれんぼの話なんか持ち出して、一人懐かしむ君はいつだってマイペース。


 そんな君を迷いなく見つけられたのは、幼馴染の私だけ。


 だけどそんな私の事を真っ先に見つけていたのも、いつだって幼馴染の君だった。


 今度は、どっちが先に「見つかっちゃった」って笑う番かな……?


 そんな話を楽しそうに私に話す君の無邪気さは、きっと人物写真のカメラマンなんかに向いている。


 だってあんなに落ち込んでいた筈の私の顔が、もうこんなにも満面の笑みで染まっているのだから。



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