彪ノ絆

Tsuyoshi

第1話

□千里小学校・運動場

  遊具が整っていて、広々とした場所だ。

  低学年の男の子と女の子が追いかけっこをしている。

  その中に、懸命に走っている女の子、おぐらともえ(8)がいる。

  ともえ、遠くの砂場を見て立ち止まる。

  砂場に男の子、クロサキアキラ(6)が一人でぽつりと砂を盛っている。

  ともえ、アキラを見つめる。


□同・砂場

  アキラ、砂を盛り上げて形を整えている。

  ともえ、アキラに近づいて、

ともえ「なにつくってるの?」

  アキラ、形を整えながら、

アキラ「…なまえ」

  ともえ、その形を見下ろしながら、

ともえ「なまえ? それ、かんじ?」

アキラ「…かんけいないだろ、おまえには」

ともえ「…キミ、なんねんせい?」

アキラ「…いちねん」

ともえ「じゃあ、わたしのほうがふたつおねえちゃんだね。わたしは、さんねんせい」

アキラ「…うん」

  ともえ、アキラの隣にしゃがんで、

ともえ「わたしもなまえをかんじでかけるんだよ」

  砂を指でなぞりだす。

  『歩萌』の砂文字が出来上がる。

  アキラ、砂文字を見て、

アキラ「あ……(戸惑う)」

ともえ「ともえ、ってよむの。あゆみもえるの、ともえだよ。わたしね、はしるのがだいすきなんだ」

アキラ「…おれも。きらいじゃない。あゆみもえるって、どんないみ?」

ともえ「歩んでいくと、その足あとから新しい芽がいっぱい実っていくんだ、ってお  しえてもらったよ。ヘヘヘ…ね、キミは?」

  アキラ、手を止めて立ち上がり、

アキラ「できた」

  泥んこの手で鼻をふく。

ともえ「わぁ…(笑顔になる)」

  『彪』と浮き彫りされた大きな砂文字だ。

アキラの声「おれのなまえは、アキラ。(ヒョウのように、あざやかに、っていみ)―――」


□メイン・タイトル

  『彪ノ絆‐アキラのきずな‐』

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る